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第31話

「ごめんなさい」  紫釉が席を立ち、浩宇の元へ寄る。  いつの間にか、その背を追い越して伸びてしまった自分の背丈。  でも僕は、いつまでたっても心配かける親不孝者だ。 「浩宇、泣くな。とにかく、無事にまた一緒に暮らせるんだ。笑顔を見せてくれ」  天佑が、その広い腕で愛する二人を包み込む。  共に暮らし、喜びを、悲しみを分かち合う。  そんなささやかな幸せすら貴重な、魔闘士。  しかし、とも思う。  その魔闘士にならねば、こうして浩宇と出会う事もなかったと。  また、浩宇と出会わなければ、たとえ魔闘士になったとしても、到底今まで生きてはいられなかったと。  このたびの戦いでも、つねに浩宇の祈りのオーラは天佑に届いていた。  紫釉に届いていた。  ようやく涙をふき、笑顔を見せてくれる浩宇。  あぁ、その瞳は変わらず美しく、その微笑みは変わらず優しい。 「愛しているよ、浩宇」 「僕もだよ、天佑。そして、紫釉の事も」  温かく、穏やかな戦士の休息が訪れていた。

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