16 / 32

第16話

 ベッドサイドにお行儀よくたたまれた制服のポケットから、麻希は何やら取り出した。 「はい、今日の分」  可愛い文鳥がたくさん描かれている、ポチ袋。  開けてみると、そこには折りたたまれた10000円札が入っていた。 「やっぱり受け取れないよ、お金なんて」  常識的に一真はそう言ったつもりだったが、途端に麻希は機嫌を損ねた。 「勘違いしないでよね。僕は、先生の身体を買ったんだから」 「佐倉」 「恋とか愛とか同情とか、いらないから。これはビジネスだよ」  解った、と一真は紙幣を受け取った。  そこまで言われれば、受け取らないわけにはいかなかった。 (恋も愛も同情も、いらないか)  一真は麻希を見送ると、肩を落として溜息をついた。

ともだちにシェアしよう!