17 / 32
第17話
麻希の家庭は、裕福だ。
名家に生まれ、父親の事業は順風満帆。
麻希の通う学校には、以前から多額の寄付をしていたという。
今もそうだ。
古びていた講堂の緞帳は、全て麻希の父が寄付で一新させた。
破れ温室は建て替えられ、青々とした緑で埋め尽くされた。
ただ、その家庭環境はどうだろう、と一真は思う。
まだ高校生の麻希が、教師を買うのに万札をちらつかせるのだ。
「普通じゃないよな、きっと」
そこでまた、溜息をひとつ。
「生意気な所もあるけど、可愛い奴だと思ってたのに」
『恋とか愛とか同情とか、いらないから。これはビジネスだよ』
恋に変わりかけていた好意は、見るも無残に砕かれた。
ともだちにシェアしよう!