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第17話

 麻希の家庭は、裕福だ。  名家に生まれ、父親の事業は順風満帆。  麻希の通う学校には、以前から多額の寄付をしていたという。  今もそうだ。  古びていた講堂の緞帳は、全て麻希の父が寄付で一新させた。  破れ温室は建て替えられ、青々とした緑で埋め尽くされた。  ただ、その家庭環境はどうだろう、と一真は思う。  まだ高校生の麻希が、教師を買うのに万札をちらつかせるのだ。 「普通じゃないよな、きっと」  そこでまた、溜息をひとつ。 「生意気な所もあるけど、可愛い奴だと思ってたのに」   『恋とか愛とか同情とか、いらないから。これはビジネスだよ』  恋に変わりかけていた好意は、見るも無残に砕かれた。

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