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第29話

「俺はお前に買われたくなかった。恋人として、愛を交わしたかったよ」 「一真、先生……ッ!」  麻希は、嬉しいとも言わなかったし、嬉しくないとも言わなかった。  ただ一真の胸にすがりつき、泣き始めた。 「僕、僕ね。憧れてた人に、一度だけ抱かれたんだ」 「そうか」 「でも、でも、その人はノンケだったから、冷やかしで僕を抱いただけだったんだ」 「酷い奴だな」 「エッチの最中も、僕の事ガバガバだとか、男のくせに、とか言って笑って」 「ガバガバじゃないよ」  後は言葉にならず、わぁわぁ泣く麻希だった。  

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