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第30話

 麻希の泣き声が治まり、しゃくりあげる程度に落ち着くと、一真は麻希を抱いたまま問いかけた。 「お前が傷つき、悩んでいたことは解ったよ。でも、どうして俺を買おうと思ったんだ?」 「一真先生のこと、好きだったから」  ずっとずっと、好きだったから。  もう一度、麻希の涙腺が決壊した。  ぽろぽろ零す涙を、一真は唇で優しく吸い取ってあげた。 (何だ。これって、両片思いってヤツだったのか?)  恋焦がれて眠れぬ夜を過ごした時間が、勿体ない。  いや、それさえもこの恋の肥やしにはなっただろう。  でなければ、教師の身でありながら生徒に告白するなんて暴挙に出やしなかっただろうから。

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