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第46話
夜。
書類を作ったり、検査結果を精査したり診断したりで、久しぶりに随分と残業をした山岡。
その仕事終わりを待って、一緒に帰ってきた日下部は、山岡と共にマンションに入った。
「泰佳」
「はぃ…?んっ」
玄関を入ってすぐ、山岡の腕をグイッと掴み、荒々しい口づけの音が響かせる。
性急な仕草に、山岡は翻弄されるまま口づけを受け入れるしかない。
「んっ…はぁっ…んぁっ…」
ドンッと、玄関横の壁に押し付けられ、口内を犯される。
上手な日下部のキスに、まだまだつたなく応えるだけの山岡は、もうすでに壁に寄りかかって立っているのがやっとだ。
「っ、はっ…んぁっ…」
十分に山岡の口内を犯し尽くした日下部が、ふと離れていった瞬間、カクンッと膝が挫けた山岡が、ズルズルとその場に座り込んでいってしまった。
「おっと…おいで」
気持ち良さそうにポーッとしている山岡を見下ろし、日下部はその身体を抱き上げる。
小柄とはいえ、成人男性である山岡を、横抱きに持ち上げる力はなかなかのものだ。
「っ…オレ、歩け…ます…」
抱き上げられたことが恥ずかしいのか、グズグズと動いた山岡に、日下部はニコリと微笑んだ。
「じっとしてて。じゃないと落とすよ?」
「っ…」
フッとわざと吐息と共に耳に囁いた日下部に、山岡の身体がビクリと跳ねる。
反射的に抵抗をやめてしまった山岡は、日下部に運ばれるがまま、リビングを通過し、寝室に連れて行かれた。
「っ?!」
「泰佳…」
トサッ、とベッドに下ろされ、そのまま仰向けに押し倒される。
ぐい、と圧し掛かってきた日下部が、山岡の額に、目尻に、頬に…とキスを落としながら、プチプチとシャツのボタンを外していく。
「日下部せんせ…?」
カチャカチャと、いつの間にかベルトも外され、ジッパーも下ろされたズボンがスルリと足から抜き取られた。
「っ…」
チュ、チュ、と首筋まで落ちた日下部の唇が、喉元を強く吸い上げる。
「った…」
チクリとした痛みに仰け反った隙に、スルリと下着が剥ぎ取られたのがわかった。
「ぁ…」
もう何度か教えられたセックスの予感。
山岡は、胸に移ったキスにビクビクと震えながら、日下部の手が中心にかかったのを感じた。
「っ…」
嫌なわけではない。ただ、突然の日下部の行動が、不思議でならない。
山岡は、ユルユルと中心を刺激される快感に小さく身じろぎながら、胸の飾りを舌で転がしている日下部の胸元で揺れる髪をぼんやりと見下ろした。
「日下部先生…?どうかしたんですか?」
「ん?」
求められることは純粋に嬉しいが、こうも突然抱こうとしてきた日下部には、性欲以外の何かがあるような気がした。
「その…いや、じゃないんですけど…なんか、ありましたか?」
優しい愛撫にピクンと反応してしまいながら、山岡は、ふと胸元から目だけ上げてこちらを見ている日下部に首を傾げた。
「なにも」
「そう…ですか…」
「うん。なにもないけど…。人はさ、人は…いつ死ぬかなんて、わからないな、と思ってね」
「え…?」
急にクスッと笑って、胸から顔を上げた日下部に、山岡はドキリとした。
「日下部先生…なにか…」
「ん?ううん。別に、本当に、何もないんだけど。ただ、もしかしたら、明日いきなり死ぬなんてこともあるかもしれないじゃない?」
「っ…」
「そういう風に思ったらさ、なんか、今、抱きたいなって。後悔しないように、そのときできる精一杯のことをしないといけないんじゃないかってさ」
急に哲学的なことを言い出した日下部に、山岡は首を傾げながらも、日下部が何かに突き動かされていることだけはわかった。
「だめ?」
「え?いえ…その…日下部先生と…す、するのは…う、うれしい…の、で…」
カァッと頬を赤く染めながら、山岡が言うのに、日下部の目が嬉しそうに緩む。
「じゃぁ、たくさん可愛がってあげる」
クスッと笑った日下部が、中断していた愛撫を再開した。
「あっ…やぁ…」
日下部の長くて綺麗な指に絡みつかれていた中心に、へそへ、下腹部へと下がっていった日下部の唇が触れた。
チュッとキスを落とされ、カプンとくわえ込まれてしまったペニスに、山岡は羞恥と快感に震える。
「んっ…だめ…きたな…っ」
「クスクス。泰佳の身体で汚いところなんて1つもない」
山岡が感じて反応することに、嬉しそうに笑いながら、日下部は山岡の中心を舌でねっとりと愛撫した。
「ふっぁぁ…やぁ…」
「嫌じゃないくせに。勃ってるよ?」
しっかりと角度を持った山岡を、からかうように目を細める日下部。
頭を俯けて思わずその色っぽい表情を見てしまった山岡の中心が、ドクッとさらに質量を増す。
「クスクス。可愛い」
どこが?!と反論したいのに、口を開けば、もう喘ぎ声しか出せない。
山岡は、日下部の恐ろしく上手い舌使いに翻弄されて、ビクビクと身体を震わせる。
「んぁ…っ、ふぁっ…」
気持ちいい…と山岡がうっとりしたところで、ふと中心から口を離した日下部が、山岡の身体を不意にぐるんとうつ伏せに返した。
「っ?!」
「ふふ、今度はこっち」
言いながら、グイッと腰を持ち上げ、潰れた四つん這いのような姿勢にさせた山岡の尻の間に、顔を近づける日下部。
ふっ、と尻にかかった吐息に、山岡が驚いてビクリと身を竦める。
「っ?!ちょっ…なっ、やっ…」
山岡が、え?と思ったときにはもう、グイッと割り開かれた尻肉の間…。
自分では決して目にすることのないその場所に、日下部のぬるりとした舌の感触がしていた。
「っ~!やめっ…くさか…せんせっ、そんなところっ…」
それこそ、汚い、と焦った山岡が、慌てて身体を起こそうとするのを、日下部は許さない。
「じっとしてろな」
「っ…むりっ、いやっ、やぁっ…」
窄まった蕾の襞を1つ1つ丁寧に舐められ、ツプッと時折中に入り込んでくる日下部の舌。
ぞわぞわとする未知の感覚と、そんな場所を舐められているという羞恥に、山岡はポロポロと泣き出した。
「ふぇっ…やぁ…そんなっ、やぁぁ…」
恥ずかしさに上気する山岡の肌が、うっすらピンクでとても綺麗だ。
羞恥に身を震わせ、泣き出す山岡が可愛くてたまらない日下部は、ますます意地悪したい思いにとらわれる。
『さぁてと。たっぷり泣かせて、たっぷり可愛がってやる』
ニヤリ、と悪い笑みを浮かべた日下部は、震える山岡の後孔を十分に舐め濡らし、ゆっくりと口を離した。
「ふぁ…」
ようやく解放されたと思ったのか。途端に安堵したように脱力する山岡が可笑しい。
日下部は、そんな山岡を楽しそうに見下ろして、今濡らした山岡の尻の穴にそっと指を伸ばした。
「っ!」
ツプ、と指先を潜り込ませれば、途端にビクリと仰け反り、敏感な反応を示す。
傷つけないように気遣いながら、ゆっくりと沈めていく指を、山岡の後ろがキュンキュンと締めつけた。
「ふふ、そんなに力を入れられたら、食いちぎられる」
「っ…」
日下部の言葉に、カァッと全身を赤くした山岡は、あまりに艶っぽい。
「綺麗…」
「っ、くさか、べっ…せんせ…っ」
ゆるゆると後孔を刺激され、山岡はたまらず身悶えた。
「好きだよ、泰佳。好き」
指が3本余裕で出入りするまで後ろをほぐし、日下部はすでに熱くなった自身を取り出し、ピタリとそこにあてた。
後ろから覆い被さるようにのしかかり、耳元で優しく囁く。
「出会ってくれてありがとう」
「え…?っ!ひぁっ…」
ズッと後ろから一気に貫かれ、山岡の背が仰け反った。
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