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第53話
「とりあえず、寝室?ここでされたい?」
一体お仕置きとは何をされるのか。わからない山岡は、場所など選べない。
ニコリと笑った日下部は、戸惑う山岡を見て、スタスタと寝室の方へ向かった。
「じゃぁこっち。おいで」
寝室のドアを開けながら誘う日下部に、山岡はソロソロとついていく。
これから何をされるのか怯えているのが丸わかりな、日下部から見たらひどくS心を誘う様子なのがたまらない。
怖いくせに、本気で日下部の口車に反省している山岡が、素直に従うものだから、余計に日下部の意地悪も加速する。
「ベッドに上がって。下、脱ごうか」
クスッと笑って命じる日下部に、ビクッとしながらも、山岡はソロソロとベッドに乗った。
「っ…あの…」
「ん?」
スタスタとクローゼットに向かってしまった日下部が、手に何かを持ってベッドの側に来た。
山岡は、その道具をジーッと見てしまう。
「泰佳?」
「っ…ローターは、使わないって…」
日下部が持って来たものに怯えた目を向けながら、山岡が眉を寄せた。
「うん。ローターじゃないからな、これ」
「っ!」
それが屁理屈だということはわかった。
山岡は、ローターしか知らないからそう言っただけで、道具類、という意味だったのに。
けれども日下部は、そんなことわかりきっていながら、敢えて揚げ足を取っている。
「泰佳?」
「っ…ズルい…」
チラチラと日下部の手の中を見ながら、用途がわからないらしく、完全に怯えた目を向けている山岡。
「クスクス。それは反省してないって取ればいい?」
「っ…それは…」
山岡の心理に訴える作戦は、あっさり功を奏す。
(だから、甘いなぁ、山岡…)
クスクス笑いながら、日下部は少し安心させるように山岡を見た。
「まぁ。痛いものではないよ」
「っ…」
「だから、ほら、ズボンと下着、脱いじゃって」
「ぅ…」
ジッと見ながら促す日下部は、視線が羞恥を倍増させるとわかっていて、山岡に意地悪している。
「っ…」
カァッと頬を上気させながらも、山岡は反省の方が深く、ノロノロとだが、確実にズボンと下着を脱ぎ去った。
「っ…」
すぐにベッドの上の布団を引き寄せて、露出した下半身を隠してしまう山岡。
その可愛い仕草に笑ってしまいながら、日下部は容赦無くそれを剥ぎ取る。
「やっ…」
「駄目。さぁまずはこれ…」
言いながら、手に持っていた道具の中から、シリコン製の丸いリングを見せて、日下部がニコリと笑った。
「な、に…?」
ビクビクと怯えながら、その用途を探る山岡。日下部は、山岡がそれに思い至る前に、キシ、と音を立ててベッドに膝を乗せ、のしかかった山岡の中心を掴み、その根元にリングを嵌めてしまった。
「っ?!なっ…」
ようやく使い方がわかった山岡だが、それは新たな恐怖に他ならない。
そんなところを締め付けられたら、何がどうなるかくらいはわかる。
「ぃゃ…」
フルフルと首を振って、それを外そうと伸ばされた山岡の手を取って、日下部はニコリと綺麗に笑った。
「お仕置きだって言ったろ?勝手なことしちゃ駄目だろ」
「っ…こんな…」
すでに涙目になる山岡を楽しそうに見つめて、日下部は山岡の身体をクルンと返した。
「っ?!」
「腰上げて」
「ぇ…?」
言いながら、すでに俯せにした山岡の腰を持ち上げている日下部。
尻を高く突き出すように膝を立てられた山岡が、恥ずかしがって身を捩った。
「ゃぁっ…」
ペチンッ。
「こら」
勝手に動いたことを咎めるように、軽くお尻をはたいた日下部に、途端に山岡の身体が大人しくなる。
「っ…」
「いい子だ。解すから、その間、これを舐めてろ」
クスッと言った日下部が、山岡の目の前に細い棒状の、先が丸くてゴツゴツと出っ張りがいくつかあり、持ち手がついた何かを差し出した。
「……?」
キョト、とそれを山岡が見つめたのが後ろからでもわかる。
日下部はクスクス笑ってしまいながら、目の前にある山岡の尻にタラリとローションを垂らした。
「ひゃっ…」
「クスクス。ローターといい、バイブといい、本当に知らないの?」
どんだけ純粋培養だ、と思いたくなってくる。
「バイブ?」
「それ。泰佳が今持ってるやつ」
目の前に出されたバイブを不思議そうに受け取っていた山岡が、ジロジロとそれを眺めている。
「泰佳、AVとかエロ本、見ないの?」
「っ…」
カァッと耳が赤くなった山岡に、さすがにそれは見るのか、と思う日下部。
「それでよく避けて通れたな…」
逆に知らない方が難しいぞ、と笑いながら、日下部はローションをたっぷり掬った指を、山岡の蕾に差し入れた。
「っぁ…」
途端にビクリと緊張し、力が入る山岡の身体。
日下部は構わず、クチュクチュと音を立てて、ズブズブと指を沈めていく。
「ぅ…あぁぁ…」
生理と反対の動きをされることが気持ち悪いのだろう。
ビクビクと震えながら、山岡がイヤイヤと首を振る。
「ふっ…ぅぁ…ぃゃぁ…」
「ほら、上のお口がお留守だよ」
日下部は空いた手で、山岡がギュッと握ってしまっているバイブを取り上げ、その口に押し込んでしまった。
「うぐっ…」
強制的に口を塞がれた山岡が、苦しさからか反射的に舌で押し返そうとしている。
「クスッ…駄目だって」
ズッと後ろを解す指を2本に増やした日下部に、山岡は思わず仰け反り、口を開けてしまった。
「舐めてろ、って言ったよな?ふふ、こっちは見っけ」
「ひぁっ…あぁっ!」
後ろに入った日下部の指が、山岡のいいところに迷わず触れた。
ビクッと仰け反った山岡の中心が勃ち上がる。
「俺、ジギ上手いよ?このままついでに診察してやろうか?」
クスクス笑いながら、ふざけて言う日下部に、山岡はイヤイヤと首を振るばかり。
「ゃぁっ…ぃゃぁ…」
「いい、の間違いだろ。ほら」
意地悪モードに入った日下部は、容赦ない。
わざと山岡の前立腺を掠め、微妙な快感で山岡を翻弄する。
「腰揺れてるぞ」
「ふぁっ…いやぁ…」
決定的な快感を貰えず、そのくせいいところを掠めて期待を持たせる日下部の指使い。
前が勃ち上がり、根元のリングがキツくなる。
「ゃぁ…いひゃい…いひゃぃ…っ」
激痛ではないはずだ、と、日下部は山岡の中心にチラリと視線を向ける。
「勃ったままだな。クスクス、小さくすれば痛くないはずだぞ?」
暗に、痛いと言いながら感じているくせに、と言われた山岡が、ポロリと涙を流す。
「ふっ…あぁぁ…」
ズルッといきなり指を引き抜いた日下部に、それすら快感の山岡が仰け反る。
「もう泣いてたらもたないぞ。ほら、それもういいよ」
クスッと笑いながら、日下部は山岡の口からバイブを奪い、手にしたそれを山岡の後ろにそっと当てた。
「っ?!」
「お仕置きの本番はこれから」
「っ…それ、まさか…」
「クスクス。わかった?うん、挿れるよ」
ギクリ、とした山岡に答えるが早いか、日下部は十分解した山岡の後ろに、ズブッとバイブを突き刺した。
「っ、やぁぁっ!」
一気に異物に貫かれ、山岡が仰け反り叫んだ。
日下部は、そんな山岡の様子を観察する。
「萎えないな」
「っ…」
「これ、いいとこに当ててやるからな」
ふふ、と笑った日下部が、バイブの持ち手を持って、山岡の中を抉るようにグルリと動かした。
「っ、やぁっ、ぁぁっ!ぃやぁ…」
イヤイヤ言う割に、山岡の前は元気なままだ。
根元を締められているため、赤く充血して、とてもいやらしい。
「ふふ」
切なげに腰を揺らす山岡に笑って、日下部はバイブのスイッチを入れた。
「ひっ、あぁぁっ!んぁっ、はぁっ」
途端にビクビクと仰け反った山岡。
前立腺にばっちり当てられたバイブが、動き始めたからたまらない。
激しすぎる快感に、高まる射精の欲求。
「あぁぁっ!ぃやぁ…っ、いやっ、取って…これ取ってぇっ…」
イキたくてもリングのせいでイケないだろう。口の端から涎を垂らし、腰を振って悶える山岡が、自分の中心に手を伸ばす。
「駄目~」
クスクス笑った日下部が、その手を捕らえ、グルンと山岡の身体を仰向けに返して、頭上でその両手をひとまとめに押さえつけた。
「あぁぁっ!ぃやぁ…日下部っ、せんせっ…いやっ、いやぁっ」
中で振動するバイブをグリグリと動かされ、山岡が腰を振って身悶えまくる。
泣きじゃくり、必死で日下部に縋る目に、日下部がゾクリとするような色香を放ち、舌舐めずりした。
「千洋っ…千洋助けて…」
「ん~?」
「千洋ぉっ…ごめっ、なさっ…もっ…」
「うん」
「もっ、許しっ…。いやっ、ぁぁっ…」
ビクビク仰け反り、必死に訴える。
日下部は、ニコリとそんな山岡を見下ろし、壮絶に微笑んだ。
「泰佳に関することで、俺に関係ないことは1つもないよ?」
「あぁぁっ!わかっ…わかったからっ…」
「今度、山岡氏のお墓、一緒に連れて行ってくれる?」
「行くっ…行きますからっ…」
「ん、いい子。イッていいよ」
バイブから手を離し、すっかり硬くなり充血している山岡の中心に手を添えた日下部。軽く扱き出せば、たまらず山岡の腰が揺れる。
「出なっ…出せないぃっ…」
戒められている中心を訴える山岡だけれど、日下部はニコリと綺麗に笑う。
「イケるよ。空イキして」
悶える山岡をそれはそれは楽しそうに見つめて、日下部はとどめにバイブをグリッと動かした。
「ひぁっ…あ、あぁぁっ!」
ヒクンッと足を突っ張らせた山岡が、大きく喘いで全身を震わせた。
「んぁっ…あっ、はぁっ、あぁぁ…」
ビクビクと震えて、長く続く絶頂に震える山岡。頭がおかしくなりそうな快感に、涙をボロボロ流している。
「ふふ。イケたな。ドライ、たまらないだろ」
楽しそうに笑っている日下部にも、山岡はもう答える余裕はない。
「ひぁぁ…」
イッても終わらない快感に犯されて、虚ろになりつつある山岡の瞳。
「上手にできたな。泰佳、好きだよ…」
日下部は、ようやく山岡からバイブを引き抜き、コックリングも外してやる。
途端に堰きとめられていた精液が、ダラダラと溢れ出す。
「ぅあ…あぁぁ…」
泣きながら脱力する山岡の目尻に、チュッと口づける。吸い取った涙がしょっぱい。
「大丈夫?」
「ふぇっ…ふぇぇっ…。もっ、やだ…こんなのっ…やだぁ…」
エグエグ泣き出す山岡を、慰めるように抱きしめた。
「お仕置きだからな。でも気持ちよかっただろ」
「っ…それは…」
言葉に詰まることが、答えているのだとわかっているのか。
嘘のつけない山岡を愛しく思いながら、日下部はその唇に唇を重ねた。
「んっ…くさかっ…せんせ…っ」
「ん?」
「日下部っ…せんせ…は…?」
口づけを受けながら、山岡が恐る恐る日下部の中心に手を伸ばした。
散々の山岡の痴態に煽られたそこは、しっかり熱く膨らんでいる。
「うん、まぁ…」
結構きついが、我慢できないほどではない。それより山岡の身体の方を気遣う日下部は、無理にしようとは思っていなかった。
「あの…その…」
「ん?でも泰佳、身体キツいだろ」
まだまだ開発途中の身体だ。ドライでいかされただけで、もう十分だるいだろう。
「っ…でも、その…」
「泰佳?」
「オレ、は…その…」
「うん」
「ち、千洋の…が、…ほしぃ…」
「え?」
「ば、バイブ…なんかじゃ…やだ…から…千洋の…」
カァッと顔を真っ赤にした山岡が見えた。
振り乱したせいで、長めの前髪は完全に分かれ、山岡の美貌は露わになっている。
その綺麗な顔が赤く染まり、恥ずかしそうに自分を欲してくれる表情に、日下部は完全にやられた。
「泰佳」
「んぁっ…あぁぁっ!」
もう慣らさなくても十分解れている山岡の蕾。触れるまでもなく完全に勃ち上がっていた自身を、日下部は性急に山岡の中に突き入れた。
「消してやるよ。バイブの感触。俺に塗り替えてやる…くっ」
きゅんと締まる山岡の中にもっていかれそうになりながら、日下部は山岡のいいところを擦り上げる。
徐々に律動を早め、再び頭をもたげた山岡の中心にも手を伸ばす。
「今度はちゃんと出していいよ」
コソッと山岡の耳元で囁けば、途端にズクンと締め付けがキツくなる。
「っ…く」
「あっ、あぁぁっ…」
きちんと山岡が快感を得ているのを確かめ、日下部はますます腰の動きを早く激しくする。
「あっ、あぁぁっ…出るっ…出っ…」
「いいよ。イケ」
ズンッと一際強く腰を突き入れた日下部に奥を犯され、山岡は2度目の絶頂を迎えた。
同時にギュッと締まった後ろに高められ、日下部もまた、快楽の飛沫を吐き出した。
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