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第65話※

一方、寝室に入った山岡は、日下部が言っていたベッドサイドのチェストの引き出しを開け、中に入っていたものをベッドに並べて困っていた。 「何これ…。球がいっぱい並んでて…」 初めて見るアナルパールを見て、顔を引きつらせている。 「こんなの入れるものじゃないよな…?」 考えただけで苦しくなりそうなそれを避けて、別のものに手を伸ばす。 「このリングは違うし…ってことは、やっぱりこれ…」 不安から、ブツブツ独り言を言ってしまいながら、山岡は1度されたことがあるローターを手に取った。 「またされるの…?」 ふぇっ、とすでに泣きそうになる山岡は、以前にローターでされたお仕置きを覚えていた。 「あの恥ずかしくて変で嫌なやつ…」 嫌だ、と涙目になりながら、山岡は手に持ったローターをギュッと握り締めた。 「でもしないと叩かれる…」 ローターも嫌だが、痛いのはもっと嫌だ。山岡は、そっと手のひらを開いて、ローターをジッと見つめた。 「っ…」 入れるしかない、と思った。 山岡は、日下部が帰って来るまで、という制限も気になり、仕方なくローターを置いて、カチャカチャとズボンのベルトを外した。 ベッドに膝立ちで乗って、下着ごとズボンを膝まで下ろす。 並べたものの中からローションを取って、タラリと指に垂らした。 「っ…こんな、こと…」 指を濡らすまでは良かった。 けれどいざ、それを後ろに回し、自分の尻の穴に触れるなんて、やっぱり恥ずかし過ぎて手が止まってしまった。 「嫌だ…できない…」 医者として、患者の直腸診くらいは何度だってしたことがある。 だから人の肛門を触ったことならある。だけどそれが自分のものとなったら、とてもすんなりできることではなかった。 「っ…嫌だ、無理だ…」 手にローションを垂らしたまま、固まってしまった山岡。 ジリジリと時間だけが過ぎていく。 「っ…」 目の前に転がっている小さなローターが目に入る。 「……」 解さずに入れたら…と後ろに自分で触れなくていい状況を考える。 「っ…痛い…よな…」 いくら小さいものでも、異物は異物だ。 解しもしない固いままの蕾にそんなものを押し込んだら、痛いに決まっている。それくらいの想像はつく。 「はぁっ…」 何より痛いことが嫌な山岡は、そっと息を吐いて覚悟を決めた。 「っ、う…」 膝を立てて、上半身を軽く折り曲げ、片手でベッドベッドに捕まり身体を支え、もう片方の手を後ろに伸ばす。 そっと触れた双丘の間。自分では目にしたことのない小さな穴に、ピトと指先を触れさせた。 「っ!…や、ぁっ…」 冷たい、と思ったのは一瞬で。 覚悟が揺らがぬうちに、と、山岡は蕾に触れた指をグッと折り曲げ、ツプッとそのナカに沈ませた。 「うぇ…気持ち悪い…」 生理と逆の動きをする指が不快だ。 ましてやそれが自分の意思で動くものなどと、考えたくもない。 羞恥と屈辱で、涙が浮かんでくる。 「っ…く、ぅ、はぁっ…」 思わず引きそうになる手を全力で我慢して、山岡はユルユルと指を尻の中に埋めて行った。 「っ…ぅ…ゃぁ…」 クチュッ、クチュッと恥ずかしい音が後ろから聞こえる。 抜き差しを始めた指は、大分スムーズに動くようになった。 前立腺は上手く避けて、ただ入り口と中を解すことに専念する。 「んっ…ゃぁ…」 恐る恐る2本に増やした指が何とか潜り込んだところで、山岡は早々に指を引き抜いた。 「もっ…いいよな?」 2本入れても痛くないことを確認し、いよいよローターを手に取った。 「っ…」 グズグズしてたら覚悟が萎える、と思っている山岡は、ギュッと目を瞑って、思い切ってそれをお尻の中に押し込んだ。 「ぅぁ…」 前立腺には当たらないように、比較的浅めの位置に入れた。 けれども押し出してしまわない程度には中のほうで、違和感は拭えない。 「っ…」 モジッとお尻を動かしながら、山岡はやることはやったと、急いでズボンと下着を上げた。 「っ…ん」 身動きすると、中の異物を意識してしまう。 山岡は必死で気にしない振りをしながら、並べていた他の道具をポイポイとチェストに戻し、ソロソロとリビングに戻った。 幸いなことに日下部はまだ帰って来ていなかった。

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