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第69話※

「っあ、あぁぁっ!いやぁぁ~っ!」 ポト、とローターが落ちたのを自分でも感じたんだろう。 途端にペタンとベッドにうつ伏せて、ワンワンと声を上げて泣き出す。 屈辱と羞恥にまみれて泣きじゃくるその姿に、ゾクッとたまらない快感をもつ日下部は、本物のサディストだった。 「泰佳」 「いやぁっ、いやっ、いやぁぁっ」 ウワーンと泣き声を上げて止まらない山岡の背中を、日下部は宥めるように優しく撫でた。 「いい子、いい子。上手にできたな、えらかったな」 こんなことを褒められても普通なら嬉しくないだろう。 だけどすでにわけがわからなくなりつつある山岡ら、ホッと脱力していった。 同時に、その行為で多少萎えていた中心が、ピクリと再び固さを増した。 「っ…」 「ん?背中撫でるの、気持ちいい?」 山岡の変化に気づいた日下部が、クスクス笑いながら、明らかな意図を持って背中をサワサワと撫でた。 「っんぁ…」 今の山岡は、日下部が触れてくれる全てが気持ちいいのだろう。 ゴソリと身を捩りながらも、口からは嬌声をこぼしている。 「ふふ」 日下部は、山岡の快感を煽る意図を持った手を、背中のみならず、脇腹、お尻、そしてその前の性器へと、順番に這わせていった。 「んぁっ…あぁ、はぁっ…」 山岡の中心が、完全に勃ち上がる。 身悶える山岡の身体は熱く火照り、口からは絶え間なく喘ぎ声が漏れる。 日下部は、山岡の腰をグイッと持ち上げ、伸ばした手でその中心を上下に扱いた。 「っあ、あっ、あぁ…」 ピクピクと震えながら、快感に耐えているのだろう。 山岡の目が、トロンと快楽に溺れていく。 それを確認した日下部は、先走りで濡れた手を後ろに持ってきて、そっと尻の間に指を沈めた。 「っあ!」 ツプ、と大した抵抗もなく潜り込んだ日下部の指。 山岡自身の滑りを借りて、なんなく奥に進んでいく。 「かなり柔らかいな」 迎える準備があることに喜びながら、日下部は早くも2本に増やした指で、サラリと前立腺を探し当てた。 「ひゃっ…あぁぁっ」 途端にビクリと震えた山岡の身体。前から溢れる先走りの量が増え、絶頂目指して駆け上っていくのがわかる。 けれども日下部はそこまでして、イク寸前に、スッと山岡の後ろから指を引いた。 「っえ…」 イける、とでも思っていたのだろう。 突然訪れた急激な喪失感に、山岡の目がフラリと揺れて後ろを振り返った。 「日下部せんせ…?」 「クスッ。まだお仕置き終わってないんだけど」 ここまで来てもまだ意地悪を続ける日下部に、山岡の顔がクシャッと歪んだ。 「イきたい?」 「っ…ん」 コクン、と素直に頷く山岡に満足して、日下部はニコッと壮絶な笑みを浮かべた。 「だったら可愛くおねだりしてみて」 「え…?」 「上手にできたらお仕置きは終わりにして、ご褒美をあげるよ」 ニコリ。ズボンの中ですでに存在を主張している自分自身を示して笑う日下部に、山岡の喉がゴクリと鳴った。 「最後のお仕置き。自分で俺を誘ってその気にさせて?」 ふふ、と笑った日下部に、山岡はフラリとわずかに何かを考え、クルンと身体の向きを変えて、日下部の前に跪いた。 「っ…」 そろそろと日下部の中心に伸びてきた山岡の手。震えるそれが、恐る恐る日下部のベルトを外し、ジッパーを下ろしていく。 下着をわずかにずり下ろして、そこから現れた日下部に、そっと手を這わせた。 「っ、ふ…」 すでにそれなりの硬さを持っているそれを、ソロソロと上下に扱く。 ジーッとその行為を見下ろしている日下部は、吐息の1つも漏らさなければ、まったく余裕の態度を崩さない。 「っ…」 どうしよう、と山岡が迷ったのは一瞬だった。 次にはそっと上半身を折り曲げた山岡が、チュ、と日下部の性器に口をつけた。 「へぇ…」 自らそれをすることを選んだか、と目を細めながら、日下部は山岡の行動をそのまま見つめる。 その眺めが良くて、ついピクンと大きさを増してしまった日下部に、山岡がビクンと驚いて身を引いているのが可笑しかった。 「ん…あ」 エイッ、と言わんばかりに、パカと口を開けた山岡が、パクンと日下部をその中に咥え込んだ。 「っぷ…」 咥えたはいいが、そのままなんのアクションも起こさない山岡に、日下部はつい笑い声を漏らしてしまった。 山岡にしてやったことはあるが、まぁやり方は教えてないし、と考える日下部は、さてどうするか?と次の山岡の動きを楽しそうに見下ろす。 「ん…」 困惑したまま固まっている山岡の眉は、情けなくへにゃりと下がっていた。 この行為をAVで見たことはあるし、日下部にされたこともある。 だけど、自分自身がする日が来るなんて思ったことはなかったし、一体何をどうしたらいいのか、さっぱりわからない。 「ん~…っ」 咥えたまま止まってしまった口から、タラリと唾液がこぼれた。 顎が徐々に疲れてくる。 「ふははべ…へんへぇ…」 たまらず、どうしよう、と涙目で見上げれば、途端にドクッと日下部の質量が増した。 「うっ…」 「あぁ、あまりに可愛くて。ふふ、舌を使ってごらん」 うっかり煽られた日下部は、それでもまだまだ余裕で、股の間にある山岡の髪を弄んだ。 「んっ…」 日下部の言葉通り、すぐにペロペロと舐めるように動かされる山岡の舌に、日下部の目がギラリと瞬いた。 下手くそなんだけど、あまりの素直さにゾクゾクする。 「気持ちいいよ、泰佳。筋も舐めて…そう、口を前後に動かして…」 山岡の髪に指を絡めながら、日下部は山岡の動きに合わせてズッと腰を打ちつけた。 「んぐ…ぐぇ…」 喉の奥をついた日下部の先に、山岡が涙目になってえづいている。 それでも歯を立てたり吐き出したりしないところが、健気でそそる。 「んんっ…うぁ…はぁっ…」 それからも、必死で頭を動かし、舌を使って日下部を育てた山岡は、さすがに顎が疲れ切ったか、ソォッと舌で押し返すように日下部自身をつついて、ソロソロと頭を引いた。 「ごほっ、ごほっ…はぁっ」 口から出した日下部自身は、始めよりもずっと大きさを増していた。 それを見た山岡の目が、ほんのりと嬉しそうに緩む。 (可愛いな…) 思わずキュンと来た日下部の中心が、ピクリと揺れる。 それを見つめた山岡が、モジモジと腰を動かした。 (ふぅん。後ろ、疼いてきたんだ?) まぁ、媚薬を盛られていると思い込んでいるのもあるだろう。 だけど、日下部自身を見てその反応をしてくれる山岡が、とても愛おしく思えた。 「泰佳?」 「んっ…あの…」 モジッと身を捩った山岡が、ソロソロと身体の向きを変えた。 「ん?」 ジーッと見つめる日下部の視線の先で、背を向けて四つん這いになった山岡が、ふと自分のお尻に手を伸ばしてきた。 「泰佳?」 「あの…こ、ここに…っ」 「ん?」 「こ、ここに…ち、千洋の…」 そっと双丘に手をかけ、割れ目を開いて、奥の蕾をあらわにした山岡。 その蕾も開くようにそこに指を添えて、頭だけ後ろを振り返って、日下部を見つめている。 「千洋…を、挿れ…て、くだ…さ…」 潤んだ瞳を向けられ、お尻を突き出されてそんな台詞を言われ、日下部の中でプツンと何かがキレた。 「っ!泰佳っ」 思わずガバッと山岡に圧し掛かり、グルンッとその体を仰向けに返してしまう。 パタンと寝転んだ山岡の両膝の後ろに手をかけ、グイッと持ち上げながら左右に開いた。 「っぁ…」 「泰佳」 しっかり煽られてしまった日下部が、ニコリと壮絶に笑う。 それをぼんやりと山岡は見上げて、ニコリと微笑み返した。 「千洋…?」 「ん。合格。お仕置きお終い。ご褒美やるな」 ふふ、と笑って、山岡の誘いに合格点を出した日下部が、ピタ、と山岡の蕾に自身を突きつける。 「千洋っ…」 んっ、と吐息を漏らして力を抜いた山岡のタイミングを見計らって、日下部はその中心にズッとペニスを突き立てた。 「んぁあっ!」 いつにもまして大きな喘ぎ声を漏らした山岡。 ビクンと仰け反る胸と、腰が快感に揺れる。 その目に映るのが歓喜のみなのを読み取り、日下部は一気に奥まで押し込んだ性器を、ズッと強く引いた。 「あっ、あぁっ…んっ」 ギリギリまで引き抜いた性器を、またも一気に奥まで押し込む。 前立腺をグイグイと擦り上げ、山岡を快感に跳ねさせる。 「ふっぁ…あぁっ、きもち…気持ちいい…っ」 ウットリと目を細め、悦びに喘ぐ山岡を、日下部は満足そうに見下ろした。 自身もゾクゾクと快感を得ながら、日下部は抽挿を早く、激しくしていく。 「あぁっ、あぁ…っ、ん、千洋…っ、ちひろぉっ…」 「んっ…」 ギュゥッと足を日下部の腰に絡みつかせてくる山岡は、いつにも増して大胆だ。 それに煽られまくった日下部もまた、ガンガンと腰使いを荒くする。 「あぁっ、出っ、るっ…出ちゃう…っ」 「いいよ、イケ」 グンッとひと際大きく腰をグラインドさせた日下部に、山岡はピクンと足の指先を引きつらせ、白い喉元を晒して仰け反った。 「あぁぁっ…あぁ~っ」 「ん、くっ…」 山岡が吐精したのと同時に、ギュゥッときつい締めつけにあった日下部もまた、ドクドクと快楽の飛沫を吐きだした。 「はぁっ、はぁっ…はぁっ…」 射精の余韻で乱れた息をする山岡から、スルッと抜け出す。 ピクンと身体を揺らした山岡の目が、ふわりと幸せそうに緩んで日下部を見つめた。 「クスクス。可愛かったよ、泰佳」 「っ…」 「辛かった?」 クスッ、と笑いながら尋ねる日下部は、最後の最後に1つ、とっても意地悪をしてやる予定だ。 そんなことも知らずに、幸せそうに緩んでいた山岡の目が、キッと日下部を好戦的に睨んだ。 「辛かったに、決まってますっ…あんな、あんな…」 散々されたお仕置きを思い出したか、カァッと赤くなる頬がまた可愛い。 日下部は、そんな山岡の様子をのんびりと眺めながら、疲れ果ててクタリと横たわったままの山岡の髪を優しく撫でた。 「いっぱいお仕置きされたもんな~。あ~んなもの、自分で入れたり、自分で出しちゃったり」 クスクス。意地悪く笑う日下部に、山岡がフイッと目を逸らして、口を尖らせる。 「あんなのっ…薬のせいで…っ」 オレは正気じゃない、と言い訳するつもりか。案の定、罠にはまった山岡の台詞に、日下部は心底嬉しそうな笑みを浮かべた。 「プラシーボ効果」 ポツリ、と突然告げた日下部に、山岡の顔が一瞬ポカンとなった。 「え…」 ポカンとした山岡の顔が、ジッと見つめる日下部の視線の先で、徐々に崩れて歪んでいき、最後はクシャリと潰れた。 「嘘ですよね…?」 「俺は嘘はつかないよ?」 「っ…」 ケロッと笑う日下部に、山岡は必死で記憶を掘り起こし、確かに日下部は一言も薬の成分を口にしてはいなかったと気づく。 「嘘だ…」 「味でわからなかった?泰佳が飲んだのはただのビタミン剤だよ」 クスクス。どこまでも楽しそうに笑う日下部に、山岡の顔がみるみるうちに別の赤さに変わった。 「日下部先生っ!」 「ふふ。これもお仕置きのうち。今日の泰佳の身体の反応は、ぜ~んぶ薬のせいなんかじゃないからね」 「っ…」 「嬉しかったよ。俺を欲しがってくれて」 「なっ…」 「泰佳。俺は、俺の全ては、おまえのものだ」 ふわりと綺麗に微笑んだ日下部が、ゆっくりと山岡の顔に顔を近づけた。 まさかの偽薬なんかを使われた山岡は、自分の身体の反応の恥ずかしさから、プンプン怒っていたはずなのに。 間近に迫るキスの予感に、ヘニャリと顔を緩めてしまっている。 「んっ…」 今日はまだ、一度も触れてくれなかった唇に、ようやく初めて日下部のキスが落とされる。 馴染んだ心地良い感触に、山岡の身体からクタリと力が抜けた。 「ふふ」 好き勝手に山岡の唇を貪った日下部が、ゆったりと離れていった顔で、ニコリと壮絶に綺麗に微笑んだ。 「ま、これに懲りたら、もう俺を疑わないこと。俺は泰佳を何からも守る。俺をただ、信じてくれ…」 最後は少し、力が入って震えた日下部の声。 それが切ないほどに山岡を求める日下部の本心だと知れて、山岡はヘニャリと泣き笑いを浮かべた。 「ごめんなさい、千洋…。すごく、懲りたから…。オレは千洋を…何があっても…信じます…」 誓いのように、淡く微笑んだ山岡の言葉に、日下部は嬉しそうに笑顔を見せ、再びガバッと山岡に抱きついた。

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