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第100話※

日下部の家に上がった山岡は、リビングに入ったところに突っ立っていた。 「山岡、シャワー浴びてくる?それともご飯にするか?」 スタスタとキッチンの方に歩いて行きながら、日下部がサラリと言う。 山岡はその場に立ち止まったまま、小さく俯いていた。 「山岡?大丈夫?」 ふと、後ろを振り返った日下部が、心配そうな声をあげて、山岡の側に戻って来ようとした。 「っ…」 その気配にビクッと身を竦めた山岡が、俯いたままフルフルと首を振る。 「許さないで下さい…」 「え?」 「日下部先生っ、オレを許さないで下さい…」 ギュッと自分の身体を抱き締めるように腕を回した山岡が、震える声で言った。 「山岡…」 後悔と自己嫌悪と罪悪感にまみれて俯く山岡がわかり、日下部はそっと息を吐いた。 「オレは許されちゃいけない…っ」 事情があったにせよ、日下部を裏切る真似をしたのだ。 土浦にああは言ったが、山岡は日下部ではない他の人に身体を投げ出し、汚そうとした自分は日下部の側にはもういる資格はないと思っていた。 「はぁっ…」 「っ…」 「じゃぁお仕置きだ」 誰よりもまず山岡自身が自分を許せないことを悟って、日下部はわざと厳しい声を出した。 「っ、優しくしないで…」 「うん。とても残酷にしてあげる」 ニコリ、と笑う日下部に、ようやくノロノロと顔を上げた山岡は、とても苦しそうな顔をして、コクンと頷いた。 「じゃぁ寝室に行くよ」 フィッと山岡から目を逸らして、スタスタとリビングを横切る。 ついてこいと無言の圧力を与え、山岡にわざと冷たく当たる。 (大丈夫だよ、山岡。ただ許されることが辛いなら、たっぷり責め抜いてあげる。山岡がもう許されてもいいと思えるくらいな。俺がちゃんと昇華させてあげるから…) 日下部の中には、決して山岡への怒りはなかった。 山岡が何を思ってあの選択をしたのか。どうしてあんな酷い言葉をいくつも紡いだのか、日下部はちゃんとわかっていた。 だけどそれでも、山岡が責められる方が楽だと言うなら、日下部は怒りを装うくらい造作もない。 しっかりと日下部の後をついて寝室に入ってきた山岡を振り返り、日下部はスッとベッドに顎をしゃくった。 「上がって。服を全部脱いで」 淡々とした声で命じた日下部に、山岡はコクンと頷いて、ベッドに上がった。 オズオズと、だが文句1つ言わず、服を脱いでいく。 すぐに全裸になった山岡がベッドの上にちょこんと座っているのを見て、日下部はベッドサイドのチェストに向かい、中から道具を取り出した。 「それ、つけて」 ポイッと山岡の目の前に投げたのは、シリコン製のリング。1度使ったことがあるから、山岡にも用途はわかるだろう。 ビクッと一瞬飛び上がった山岡だが、すぐにノロノロとそれに手を伸ばした。 「はぃ…」 ストンと俯きながら、項垂れている自分の中心を持ち、その根元にパチンとリングを嵌める。 それを見届けて、日下部は次は潤滑剤のチューブを放り投げて、山岡に冷たく命じた。 「自分でして」 ふっと笑って、日下部はそのままゆっくりとベッドから離れる。 壁際まで行き、壁に背をつけ、腕組みをして、ジッとベッドの上の山岡を見つめた。 「っ…」 俺は一切手を出さない、と態度で示す日下部に、山岡がさすがに躊躇した。 壁際からそれを眺めながら、日下部はニヤリと唇の端を吊り上げる。 「出来ないの?」 「っ…いぇ…」 「簡単だろう?いつも俺がしてやるみたいに、胸を弄って」 動きを誘導するように、スッと目を細めて具体的な言葉を飛ばす。 腕組みしたままの手も壁についたままの身体も一切動かさず、日下部は視線だけを山岡に向けていた。 「右の乳首は、摘まれるのが好きだよな。左は指の腹で押すように撫でて。泰佳の乳首は、右の方が感じやすい」 わざと羞恥を煽るように、そして言葉で責めるようにする日下部に、山岡は素直に言われたまま、両手を自分の胸に這わせた。 「んっ…あっ…」 自分で自分の胸を弄り、小さな吐息を漏らす。 ジッと見る日下部の視線に感じるのか、中心がわずかに揺れているのが見えた。 (本当、Mだよな…) クスッと可笑しくなりながらも、表面上は厳しい顔を崩さない。 そんな日下部の言葉に誘導されるまま、山岡は自分で自分の身体を愛撫する。 「脇腹をなぞって、下も扱いてあげなきゃ」 ピクンと肩を揺らした山岡が、オズオズと中心に手を伸ばした。 「っ…」 「竿を擦って…裏すじも。カリを握って…鈴口を爪で引っ掻くのが好き」 日下部の言葉につられるように動く山岡の手が、ゆっくりとペニスを這う。 わずかに頭をもたげた中心に、リングが締まるのか、山岡は痛そうに眉を寄せた。 「っ、く…んっ、あっ…」 「ふふ、たまも揉んでよ」 「あぁ…いゃぁ…」 イヤイヤと首を振りながらも、中心を弄る手は止まらない。 日下部の視線の先で自慰行為をしているような感覚に、山岡は羞恥に身体を震わせていた。 「さぁ、後ろも解して」 きっと1番の難題だろう。 以前、日下部の見ていないところでしたことがあるはずだが、今日は日下部の視線がある。 さぁどうする?と見つめる日下部の視線の先で、山岡がノロノロと身体の向きを変えた。 「っ…」 潤滑剤のチューブを手に取り、それをたっぷりと指につける。 片手はベッドベッドに掴まり、もう片方の手をオズオズと後ろに伸ばした。 「んっ…ぁ…っぅ…」 後ろに突き出したお尻の間に、山岡の指が埋まっていく。 手が邪魔をして、その部分は日下部からは見えないが、多分中まで指を突き入れているのだろう。 切なげに揺れる腰に、お尻が振れている。 「っ…ゃ…あぁ…」 クチュクチュといやらしい音が響き、艶を含んだ吐息が山岡の口から漏れる。 「ちゃんと前立腺も刺激して」 残酷な命令を下す日下部にビクッとなりながらも、山岡はコクンと頷いた。 「っ、あぁっ!」 本当に、自分で中のいいところを突いたのか。嬌声を上げて仰け反る山岡の姿が見える。その従順な姿に思わずゾクゾクする。 「んんっ…あぁ、やぁ…」 しっかりと中を掻き混ぜているのだろう。山岡の前が勃ち上がっていく。 「うっ…ふっ…あぁ…」 クチュクチュと後孔を弄る指が、自然と2本に増やされた。 ゆらゆらと腰を揺らし、快感を追い始めているようだ。 「んっ…はっ…あぁっ…」 硬くしてしまった前にリングが食い込んだらしく、痛みに仰け反る姿まで艶かしい。 日下部は、ゆったりとその姿を堪能してから、ゆっくりと壁から背を離し、サイドチェストに歩いて行った。

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