135 / 426

第135話

一方、洗面所に入った日下部は、洗濯機に持ってきたパジャマを放り込んで、ハァッと深い溜め息をついていた。 「ヤバイ。あのまま見てたら暴走する、俺…」 洗剤を投入口に入れ、パネルを操作した日下部は、洗濯機の扉を閉めて苦笑した。 「手加減なしにやったら、さすがに壊しかねない…」 まだまだ性的に未熟な山岡を、日下部のペースで責め抜いたら、さすがについてこられないということは十分承知だった。 「まったく、この俺が情けない」 (ついうっかり山岡の仕草にやられて、もっていかれそうになるなんて) 「まぁ、惚れたが負けかぁ…」 ただの遊びの相手だったら、こんな風に手加減をしたり、気を使ったりなんかしない。 山岡だから、苛めて自分好みに調教しながらも、決して無理や無茶はさせられないと思う。 それでもそれを、苦とは思わない。 「人を好きになるって、こんなに幸せなことなんだな」 ふふ、と思わず笑ってしまいながら、日下部は、ゆっくりとリビングに続くドアを開けた。 「っ?!」 「ぁ…」 ドアを開けたすぐ足元に、何故か山岡が座り込んでいた。 「何してるんだ?」 「あ、あの…ご、ごめん、わん…」 ふぇぇ、と泣き声を上げながらグスグスと目を擦っている山岡に、日下部が首を傾げる。 「どうした?」 「っ…だ、って…。オレ、言うこと聞かなかったから、日下部先生怒って…」 ポロポロ泣きながら必死で見上げてくる山岡に、日下部の眉がへにゃりと下がった。 「あ~、もう。本当、おまえは俺をどうしたいの?」 せっかく繋ぎとめている日下部の理性は崩壊寸前だ。 「大丈夫、怒ってないよ」 ふわりと微笑んで、ポンポンと足元の山岡の頭を撫でる日下部に、ようやくホッと山岡の身体から力が抜けた。 「ほんとう?」 キョトと上目遣いに見上げてくる山岡に、日下部がゾクリと身を震わせる。 「本当。だからそんなに怯えるな。ほら…」 すっとかがんで、山岡をひょいと抱き上げる。 日下部は、暴れる山岡を横抱きにして、ソファまで運んだ。 (そろそろ許すかな~?) わずかに思案しながら、日下部が首を傾げた。 そこに。 ピンポーン、とチャイムの音が響いた。

ともだちにシェアしよう!