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第135話
一方、洗面所に入った日下部は、洗濯機に持ってきたパジャマを放り込んで、ハァッと深い溜め息をついていた。
「ヤバイ。あのまま見てたら暴走する、俺…」
洗剤を投入口に入れ、パネルを操作した日下部は、洗濯機の扉を閉めて苦笑した。
「手加減なしにやったら、さすがに壊しかねない…」
まだまだ性的に未熟な山岡を、日下部のペースで責め抜いたら、さすがについてこられないということは十分承知だった。
「まったく、この俺が情けない」
(ついうっかり山岡の仕草にやられて、もっていかれそうになるなんて)
「まぁ、惚れたが負けかぁ…」
ただの遊びの相手だったら、こんな風に手加減をしたり、気を使ったりなんかしない。
山岡だから、苛めて自分好みに調教しながらも、決して無理や無茶はさせられないと思う。
それでもそれを、苦とは思わない。
「人を好きになるって、こんなに幸せなことなんだな」
ふふ、と思わず笑ってしまいながら、日下部は、ゆっくりとリビングに続くドアを開けた。
「っ?!」
「ぁ…」
ドアを開けたすぐ足元に、何故か山岡が座り込んでいた。
「何してるんだ?」
「あ、あの…ご、ごめん、わん…」
ふぇぇ、と泣き声を上げながらグスグスと目を擦っている山岡に、日下部が首を傾げる。
「どうした?」
「っ…だ、って…。オレ、言うこと聞かなかったから、日下部先生怒って…」
ポロポロ泣きながら必死で見上げてくる山岡に、日下部の眉がへにゃりと下がった。
「あ~、もう。本当、おまえは俺をどうしたいの?」
せっかく繋ぎとめている日下部の理性は崩壊寸前だ。
「大丈夫、怒ってないよ」
ふわりと微笑んで、ポンポンと足元の山岡の頭を撫でる日下部に、ようやくホッと山岡の身体から力が抜けた。
「ほんとう?」
キョトと上目遣いに見上げてくる山岡に、日下部がゾクリと身を震わせる。
「本当。だからそんなに怯えるな。ほら…」
すっとかがんで、山岡をひょいと抱き上げる。
日下部は、暴れる山岡を横抱きにして、ソファまで運んだ。
(そろそろ許すかな~?)
わずかに思案しながら、日下部が首を傾げた。
そこに。
ピンポーン、とチャイムの音が響いた。
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