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第138話

「ほら、山岡。お尻出して」 「う…」 グイッとシーツを引っ張って剥がしてしまった日下部が、ベッドを示して山岡に命じた。 「まぁ、可愛いこの姿、もう少し見ていたかったけど…」 ベッドの上で四つん這いになって、お尻を突き出す山岡を見て、日下部が首を傾げている。 「もったいないな。写真撮っていい?」 「は?や、嫌ですよ!は、早く取ってくださいっ」 「撮って?」 「違いますっ。お、お尻の、それ…早く出して…」 もう嫌、と涙を浮かべる山岡に笑って、日下部はそっと山岡に近づいた。 「ねぇ泰佳」 「な、なんですか?」 「今回は誤解だったけど…もしこの先、この身体を、俺以外の誰かに許したら…」 「っ…」 「次こそ1週間の罰だからな?」 ニコリと笑って釘をさす日下部に、山岡はブンブンと首を振った。 「オレっ…2度と千洋を裏切るような真似しませんっ。誰にも触らせたりなんかっ。千洋以外には、絶対にさせないっ…」 誓うように、はっきりと叫ぶ山岡に、日下部の目が薄く細められた。 「ん。次嘘ついたら、そのときはパドルでお尻叩き。浮気をしたら、貞操帯。あぁ、お酒の約束も加えておく?」 「っ…」 「別に飲むなとは言わないけどさ。俺の前で以外は、潰れるの禁止」 「う、はぃ…」 「自分の限度量、わかるだろ?」 「はぃ…」 「断れないとか、ナシな?」 「はぃ」 「よし、いい子だ。じゃぁ取ってやるな」 クスッと笑って頭を1つ撫でて、日下部がアナルプラグに手を伸ばした。 「っ…や!」 ズルッと引き抜かれる感覚が、まるで排泄のそれのようで、山岡がブルリと身を震わせる。 「取れたよ。…大丈夫?」 ヒクつくお尻の穴を見た日下部が、もしかしてシたくなったかな?と思って山岡の前を見た。 「ふぅん。半勃ちか。まだまだ調教が甘いな」 「え…?」 「いや、何でもない。大丈夫なら、服着ておいで。俺はまったく本意じゃないけど、3人分の昼食作っておくから」 「あ、はぃ…」 「あ、そうだ。山岡ってさぁ、オムライス、チキンライス派?バターライス?」 不意に尋ねてきた日下部に、山岡がコテンと首を傾げた。 「どっちでも…」 「だって、食堂で最近よく食べてるだろ?好きなのかと思って。んで、どうせなら好みの方を作ってやろうかと」 (そんな細かいところまで見ていてくれたのか) 山岡の心の中がホワンと温かくなる。 確かに最近、ちょっとオムライスって美味しいな、と思い始めていたところだったのだ。 (食堂のやつはどっちのことなんだろう?) 「中身…赤いやつ…」 「チキンライスか。了解」 「あのっ、でもバターライスというのも…」 「食べてみたい?じゃぁ半々に作ってやるよ」 任せとけ、と笑う日下部に、ホワホワと温かい気持ちを抱きながら、山岡がふんわりと微笑んだ。 「ありがとうございます」 「そんな嬉しそうな顔されると、腕の揮い甲斐があるよ。着替えが早く済んだら、包丁使わせてやるぞ?」 野菜スープを作る、という日下部に、山岡の顔がパッと輝いた。 「行きます!」 言うが早いか、ベッドから飛び降りる勢いでクローゼットに走った山岡。 ポイッとカチューシャを捨てて、首輪をカチャカチャ外している。 「あまり慌てなくても…。俺、先に行ってるな」 ドタバタと自分の服を引っ張り出している山岡を見ながら、日下部はそっと寝室を出ていった。 「そういえば下着、脱衣所のキャビネットの中だよな」 寝室には服しかないはず、と思ってほくそ笑む日下部は、本当に意地悪だった。 「さぁて、ノーパンにズボンを履いて出てくるかな…?」 楽しみだ、と笑いながら、ゆったりとリビングを横切りキッチンに向かう日下部を、谷野が嫌そうに見つめていた。 「そのニヤケ顔、やめい」 「ふふ」 持っていた雑誌をバサッと投げる谷野から、ヒョイとそれを軽々避け、日下部は笑った。 「とらは赤?白?」 「は?」 「オムライス。チキンライスかバターライスか」 「わかるかいな!ワインかと思うわ。ったく、おれは赤や」 「山岡と同じとか、何様?」 「おまっ…そんなところで妬くなや!」 「妬いてないよ。なんとなく面白くないだけ」 それが妬いとんのや!と叫ぶ谷野を無視して、日下部はのんびりとキッチンに向かって行った。

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