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第148話

「お疲れ様でした~」 医局に戻った日下部は、デスクについて何かをガリガリ書いていた原に出迎えられた。 「なんだ、戻っていたの。オペ室からすぐに消えたからどこに行ったかと思ってた」 「気づいてたんですか?だって日下部先生、山岡先生しか眼中にないんですもん」 「まぁ…。見学お疲れ様」 何をしたわけでもないけど、と笑う日下部に、原はニコリと微笑んだ。 「山岡先生、目ぇ覚ましました?」 「うん、ついさっきね」 「そうですか。よかったですね」 ホッと息をつく原も、心配はしていたのか。緩んだ顔に日下部も微笑んだ。 「何回見せたっけ?そろそろ、今度ラパロの助手やってみる?指導するよ」 「本当ですか?やりたいです!」 パッと顔を輝かせる原に苦笑して、日下部がドサッとソファに座った。 「お疲れですね」 「さすがにな…」 「今日オンコールでしたっけ?おれ当直の…」 「うん」 言いながら、ソファに深く身を沈め、腹の前で手を組んで目を閉じてしまう日下部。そのさすがに影が浮かんだ綺麗な顔を原が見つめる。 「なるべく呼ばないようにするので、今夜はゆっくり休んできてください」 遠慮がちに言う原に、日下部が薄く目を開けた。 「そういう気は使わなくていいから。患者にとってベストだと思う判断をしろ。必要ならいくらでも呼びなさい」 フッと笑いながらまたゆっくり目を閉じてしまう日下部に、原が頭を下げた。 「すみません…」 「ん…」 そのまま黙ってしまった日下部をチラッと眺めてから、原はまたデスクの上に顔を戻した。 それからどれくらい静かな時間が流れたか、ふと目を開けた日下部が、チラリと壁の時計に目を向けた。 「回診行かなきゃ…」 「代わりましょうか?」 疲れた様子から復活していない日下部に、原が気を使う。 「いや、大丈夫。俺、そのまま病棟回って山岡先生のところに寄って帰るから」 「はい」 「当直よろしく。きみも休めるときは休んでおけよ。明日からマイナス1でシフト回すからな」 「ですね」 「寝当直だといいな」 ふっと笑いながら医局を出て行く日下部を、原が苦笑して見送る。 「お疲れ様でした」 「お疲れ様」 フラッと背を向けたまま手を振って、日下部は詰め所を出て行った。 「あぁ、まだ術衣だったな…着替えなきゃ…」 面倒だな、と呟きながら、日下部はとりあえずそのままナースステーションに向かい、回診に出た。

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