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第187話

「ちょっ、来たよ、来た。日下部先生」 「あなた聞きなさいよ」 「え、あたしですか?嫌ですよ…」 将平を迎えに来た日下部を出迎えたのは、看護師たちのヒソヒソと何やら騒めいた声だった。 「あ~、何か分かっちゃった?」 そういえば将平に口止めも何もしていなかったな、と思う日下部は、きっと自分と将平の関係についてだろうと、鋭く察した。 「っ、日下部先生、将平くんは…」 「ぱ、パパって本当ですか?」 「日下部先生のお子さんだったんですかっ?」 ニコリと微笑む日下部に、看護師たちが勢い込んで口々に聞いた。 「まぁ、将平くんはそう言っているよね」 ふっと笑いながら、日下部はどうとでも取れる答えを口にした。 「でも正直、似ていますよね…」 「血が繋がってるの、間違いないですよね」 「ねぇそれって、山岡先生は…」 「あっ、そうだよ。山岡先生可哀想…」 何やら動揺してざわめくナースステーション内に、日下部は苦笑した。 「やっぱり似ているよな~。血が繋がって…え、待てよ?」 不意に、日下部は看護師の発言から、思いついたことがあった。 「似ているから親子、と思ったけど、似ているというなら、兄弟という線だって…」 ある、と思った日下部は、ふとヒラリと白衣の裾を翻した。 「日下部先生?」 「あ、ごめん。悪いんだけど、将平くんのお昼お願い」 パッと札を1枚机に置いて、看護師に言うが早いか、日下部はナースステーションを駆け出して行った。

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