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第222話

「よし。それじゃ、時間も微妙だし…朝食っていうより、昼にするか」 壁の時計を見ると、11時になろうとしているところだった。 「あ…」 ふと山岡が小声を上げて、日下部をフラリと見た。 「ん?あぁ、腕時計?風呂入れるのに外して、脱衣所のいつものところ」 ソファから立ち上がりながら、日下部が山岡の疑問を勝手に推察していた。 「いえ、その…」 「ん?」 チラッと窺うように見てくる山岡に、日下部はもしや、と思って微笑んだ。 「バレちゃった?ペア」 クスクス笑う日下部に、山岡がハッと目を見開いた。 「やっぱりそうなんですか?原先生が…」 言っていた、と呟く山岡に、日下部は可笑しそうに笑った。 「まぁ、俺の自己満足なんだけど。多分、そこのとらに見せても、分からないと思うよ」 ふふ、と笑いながら、日下部はキッチンへ向かってしまった。 「あ?なんのことやねん」 いきなり名前を出された谷野が首を傾げているのを見て、山岡はかったるそうにソファから立ち上がり、ノロノロと脱衣所に向かった。 「山岡センセ?」 少ししてリビングに戻ってきた山岡の腕には、日下部からプレゼントされた腕時計がはまっていた。 「だからなんやねん」 ストンとソファに戻って、腕を突き出してみる山岡に、谷野は怪訝な顔をするばかり。 「高そうな時計やな。なんや、それがどないしたのや」 は?と首を傾げている谷野に、山岡はホッと微笑んで、腕を下げた。 腕時計は服の袖に隠れて見えなくなる。 一連の様子をキッチンから眺めていた日下部が、クスクス笑った。 「ちなみにとらはどんなのしてたっけ?」 昼食を作りながら、カウンター越しに声を放つ日下部に、谷野の視線が向いた。 「おれ?おれはジーさまや」 「なるほど。研修医並みだな」 とららしい、と笑う日下部に、谷野がムッと口を尖らせた。 「だって落としても汚しても安心やし」 「落とす?」 腕にはまっているものをどうして…と苦笑する日下部に、谷野はケロッと笑った。 「オペや処置の度に外すの面倒やろ。不衛生だし。だからって持ってないと死亡宣告困るし。せやから基本、ポケットの中やで」 どうやら山岡派らしい谷野に、山岡は激しく同意して頷き、日下部が苦笑していた。 そうして、日下部が作ってくれた料理が整い、3人はのんびり昼食を済ませた。 今日は日下部も山岡もオフのため、谷野は食事を済ませて帰って行った。

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