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第252話

「お疲れ様でした」 「お疲れ様」 「お疲れ様でっす」 滞りなく手術を終え、手術室を出た山岡と日下部、そして2人が並んだ後ろで原が挨拶を交わしていた。 「相変わらず、見惚れるね」 パサッと帽子を取り、廊下にあるランドリーハンパーにポイッと放り入れながら、日下部が感心したように笑った。 「え…?」 「いや。いくら画像を見ていたとはいえ、一発であの場所当てるとか」 簡単な芸当じゃない、と笑う日下部に、山岡は小さく首を傾げた。 「しかも5センチも切ってなかっただろ?」 「まぁ、ほぼ特定されてましたからね…」 「で、40分弱か~。敵わないな」 ははっと笑う日下部が何を考えているのか。不機嫌だったはずの日下部が漏らす笑いの意味が、山岡にはわからなかった。 「心配いらなかった」 ふっと微笑む日下部の言葉に、山岡は軽く首を振った。 「ちょっとでもブレるようなら、取り上げてやろうかと思っていたけど」 「あはは…」 「やっぱり山岡先生は、超一流の外科医なんだな」 フッと目を細めて笑う日下部が、なんだかいつもの日下部と違うような気がした。 「原先生」 「っ、は、はいっ」 突然、後ろを振り向いた日下部に、惰性で歩いていたらしい原が飛び上がった。 「なに油断してるの。いい機会だから、次のラパコレも見せてもらっておいで」 「え?」 「山岡先生、いいよな?」 ん?と山岡に向き直った日下部に、山岡はコクンと頷いた。 「オレは構いませんけど」 「ふふ。よく見てこい。俺よりずっと上手いから」 比べてみろよ、と笑う日下部に、原が怪訝な顔をしながらも頷き、山岡は心配そうに日下部を見つめた。 「ん?」 「いえ…」 まるで、自分を卑下するような発言に聞こえた山岡が、不安な思いに駆られている。 けれどそれをどういうこともできずに俯いた山岡に、日下部はとても綺麗に微笑んだ。 「じゃぁよろしくな」 ポンッと軽く山岡の肩を叩いて、日下部はそのままエレベーターホールとは違う方向へ足を向けた。 「日下部先生?」 「俺はここで」 じゃ、と手を振って山岡と原の側からグングン遠ざかっていく日下部の後ろ姿。 ギュッと眉を寄せたままそれを見送る山岡と、やけに普段とは違いすぎる日下部を交互に見ながら、原がコテンと首を傾げていた。

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