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第256話
「で?こんな風に煽っておいて、これだけで終わり?」
「え…?」
「泰佳のおねだり聞いてあげる見返り、まだ足りないんだけど」
ニコリと笑う日下部の表情が、いつの間にかいつものとても意地悪なものに変わっているのに気がついて、山岡の目の端がピクリと引きつった。
「だっ…まっ…」
「だってまだ、なに?」
「し、仕事中…っ。こ、ここ当直室っ…」
無理、嫌、と首を振る山岡に、日下部のニコリとした楽しげな笑顔が向く。
「そうだね。ベッドがあって好都合だな」
「なっ…」
「でも声は漏れちゃうかもな~?」
意地悪く言いながら、心底楽しそうに笑う日下部に、山岡はすでに涙目になっていた。
「やっ…」
イヤイヤと首を振る山岡を、日下部がジリジリと追い詰める。
「あぁでも、潤滑剤もコンドームも持ち合わせてない」
どうしようか?と笑う日下部に、山岡がピクリと震えた。
「っ…」
じゃぁしなければいい、と言いかけた山岡の言葉は、1歩早い日下部の声に遮られた。
「仕方ないから、自分でするの見せてもらおう」
「は…?」
名案、と笑った日下部に、山岡は思わずポカンと口を開いてしまった。
「だって、どうにかしないとでしょ?」
ふふ、と笑いながら、日下部がスルリと山岡のズボンの前を撫で上げた。
「っ…」
「キスだけでこんな、かーわいい」
クスクス笑う日下部に、山岡はカァッと顔を赤くして俯いた。
さっきのキスで勃ち上がっていたことは、気づかれていないと思っていたのに。
やっぱり日下部はそう甘くはなくて、山岡は恥ずかしさから目を潤ませて床を見つめていた。
「ほら、見ていてあげるから」
ニコリと、とんでもない発言を爽やかな笑顔でぶっ放す日下部に、山岡はフルフルとひたすら首を振った。
「ふぅん、じゃぁ罰にしようか」
「え…?」
「だって山岡、もし俺がここに連れてきて白状させなかったら、1人で勝手に秘書のところに行くつもりだっただろ」
「っ、それは…」
「医局でさぁ、一緒に帰りたくないならそう言えっていったとき、頷こうとしなかった?」
「っ!」
「嘘、つきかけたんだよな?」
「気づいて…」
ん?と追い詰めてくる日下部に返す言葉もなくて、山岡はビクビクと身を竦めながら、チラリと日下部を窺った。
「どうする?やらないんなら、お仕置きでもいいけど?」
その場合、痛いやつね、と笑う日下部に、山岡はビクリと震え、フルフルと首を振った。
「痛いのは嫌…」
昨日の痛みもまだ完全に引いていないのだ。それを叩かれると考えただけでもう泣きそうだ。
当然それを選ぶはずがない山岡をわかっていて意地悪を言った日下部は、山岡がソロソロとベッドに上がったのを見て内心でニヤリと笑みを浮かべていた。
「見えるようにちゃんと足を開いて…」
ベッドに上がって、ノロノロとチャックを下ろし始めた山岡に、日下部の意地悪な要求。
ビクリと怯えた目を向けた山岡にニコリと笑った日下部は、腕を組んで、わざと山岡の真正面に立った。
「っ…」
山岡が、いや、と喉まで出かかった声を飲み込んだのがわかった。
代わりにソロソロと開かれた足が答えなのだろう。
前から取り出されたペニスが、山岡の手の隙間から見える。
「ふふ、見られて感じているの?や~らし」
意地悪されているのに萎えていない中心をからかった日下部に、山岡の目からポロリと涙が伝い落ちた。
「俺しか見てないよ」
泣き出してしまった山岡の頬に手を伸ばし、伝った涙を指先で掬った日下部が微笑む。
ビクッと身を竦めた山岡が、ぼんやりとした目を日下部に向け、ソロソロと手を動かし始めた。
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