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第6話

由紀也は強引に安藤をホテルへと引っ張っていった。当の安藤も、酔いでフラフラになってきており、由紀也のなすがままになり部屋へと入ったのだ。 「安藤さん…今回だけでいいんです…梨々花ちゃんのお母さんの代わりでもいい…触れさせてください!」  部屋に入るなり、由紀也は懇願した。 「せ、先生…?」  安藤が一歩引くなり、由紀也は我慢できずにその場で壁へと追い詰めた。そして、彼の顔の両脇の壁に手をつき、耳に唇を近づけ「僕、安藤さんのこと好きなんですよ」と酔いに任せて囁いた。 酔ってはいても、その気持ちは本物だった。今しかないのだ。告げるチャンスは。 安藤は目を見開き、驚いたように「え?」とだけ言った。 「びっくりしたと思いますけど、僕はあなたが好きなんです」  由紀也がそう言うと、安藤は手で突っ張るようにして由紀也から自分の身を離そうとした。 「北向先生…もしかして…」  ようやく声を絞るように出した安藤の顔は、幾らか蒼ざめて見えた。 「そうですよ。僕、ゲイです」  由紀也がそう告げると、安藤は由紀也から手を離した。 「…でも、俺は…」  安藤が酷く戸惑っているのは、由紀也にも分かりやすいほどに伝わってきた。 「分かってます…。あなたが誰を見ているのか。でも、一度くらいいいじゃないですか。僕は、梨々花ちゃんのお母さんの代わりでもいい。だから、一度だけでも…」 そう言うと、由紀也は安藤との間を詰めた。 「は?な、何言ってるんですか!?」  焦りながらなんとか逃れようとする安藤の腕を掴み、由紀也は押し留めた。そして、熱を孕んだ目で、安藤を真っ直ぐに見つめた。 「僕、本気ですよ」  安藤の目を捉えながら言い、今度は耳もとに唇を寄せて「逃しませんよ」と囁く。 由紀也は安藤の腕を解放し、彼の頬を両手で優しく挟んだ。 「好きです…」  そう呟き、安藤の唇に自分のソレを合わせた。 何とも強引で独りよがりなキスで、相手にはからっきしも気持ちはないだろうことは、酔っている自分にでも分かっている。でも、今回は逃せられなかったのだ。今後のことを考えられないくらいに。  由紀也は安藤が苦し気に僅かに口を開いたのを見逃さずに、その隙間へと自分の舌を侵入させた。安藤のことを押さえつけ、口づけを深くしていく。安藤は逃れようともがくが、由紀也はなおも続ける。 右手は安藤の右手首を抑え、左手は彼の胸の中心に這わせた。そして、口づけをしながら安藤の服の上からまさぐる。

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