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第13話

それから由紀也は安藤と連絡を取り合い、お盆が過ぎた頃の土曜日の夜に2人で会うことになった。ちょうど、その日は由紀也も休みだったし安藤も予定がないということだったので、ゆっくり飲めそうだと由紀也は思考を巡らせた。 場所は新宿にある焼き鳥が美味しいチェーン店の居酒屋。なぜそこになったのかというと、2人の家のちょうど中間だったこともある。陸斗は親に預けて来るという。念のため、予約を入れておくことにもした。 その日、由紀也は時間に遅れることなく店に到着したが、安藤は既に来ていて真面目で律儀な人だなと由紀也はつくづく感じた。 「安藤さん、お待たせしました」 「いや。そんな待ってないですよ」  安藤は柔らかな笑顔で由紀也を迎えてくれた。当の由紀也は幾らか緊張している。だから、ちょっとくらい安藤にも緊張してほしいような気もしないでもない。 「何飲みましょうか?」  先に来ていた安藤が聞いてきた。何も頼まず待っていてくれたのだ。 「そうですね、取り敢えず生で」  由紀也は席に着くなり即答した。飲む時は大抵生ビールから始めるのが常なのだ。 「じゃ、僕もそれにします」    安藤はそう言うなり、近くを通りかかった店員を呼び止めて、生ビール2つと焼き鳥などを注文してくれた。 「安藤さん、焼き鳥塩派ですか?僕、焼き鳥は塩派なんですよね」 「あ、俺もですよ。できればネギまじゃない方がいいです」 「そうなんですか?焼き鳥といったらやっぱりネギまじゃないですか」 「ですかね。肉だけ食べたいんですよね」  そんな雑談をしていたら、「お待ちどうさまです」という店員の声と共にビールが運ばれてきた。  二人は「お疲れ様です」と言い合い、グラスをカチンと合わせる。 「陸斗くん、園で良い子にしてますよ。他の子とも仲良くしてますし」 「ホントですか?ワガママしてないかと心配してたんです」 「そんなことないですよ」  それは本当だった。  由紀也のクラスでも、特に手のかからない聞き分けの良い子だ。 「安藤さんが大事に育ててるのが、良く分かります」  由紀也がそう言うと、安藤は照れたように笑った。 「俺は、ただがむしゃらに育ててるだけですよ。まぁ、真っ直ぐな子に育ってくれればとは思ってるんですけどね」 「大丈夫ですよ。陸斗くんはちゃんと真っ直ぐに育ってますよ。これからの成長も、凄く楽しみです」 「ありがとうございます」  安藤は柔らかな表情を見せると、ビールをグイと豪快に飲んだ。 それを見計らい、由紀也はここしばらくずっと言いたかったことを言う決心をした。

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