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第17話

「ありがとうございます」  由紀也がイスに腰かけると、安藤はコーヒーを淹れてくれた。 改めて室内を見渡してみると、窓側に施術台があり、器具も色々と取り揃っている。こういった場所を訪れるのも初めてだし、緊張もするが子供のようにワクワクする気持ちもあった。様々に眺めていると、安藤も席に着いた。 「あの台とか器具とか揃えるのも大変そうですね」  由紀也は何気なく聞いてみた。ちょっと不躾だったかとも思ったが、話題に出してみたのだ。 「あー、結構かかりましたかね。貯金を使って揃えたんですけど。店開いてからはしばらく節約してカップ麺生活でしたよ」  安藤は苦笑した。 「でも、こうして立派にお店を構えてるのって、凄いなと思います。僕にはできないですよ」 「いやいや。無我夢中でここまでやってきただけですから。最近は、予約も増えてありがたいですよ、ホント」 「ここは、予約だけなんですか?」 「そうなんですよ。予約のみでやってます。だから、もし予約が入っていなければ店は休みってわけなんですけど、今は予約いっぱいで一か月待ちにしてもらってるんですよ」  雑誌にまで取り上げられるほどの腕だ。きっと人気で、予約も多く入っているのだろう。由紀也は少し考えてから聞いてみた。 「一人で切り盛りしていくの、大変じゃないですか?」 「まぁ、ちょっとしんどくはなってきましたかね。本音言うと。でも、本業も疎かにできないし、兼ね合いも大変ですね」  そう言うと、安藤は苦笑した。やはり、本業を持ち陸斗も育てながらこの仕事もするというのは、生半可な気持ちではできないだろうと由紀也は思った。 「僕に、少しでもお手伝いできないですか?いや。お手伝いさせてください」  真剣な気持ちだった。ただ安藤の力になりたい。それだけ。自分の立場などおかまいなしに、微力でも安藤の助けがしたいと思った。 「…え?」  安藤は酷く驚いたようで、目を丸くし由紀也を凝視する。 「真剣ですよ、僕。あなたの、力になることはできませんか?」 「いや…気持ちは嬉しいですけど…」  安藤が困惑しているのは、由紀也にも分かる。突然こうして訪れて、来たかと思ったら手伝いたいと申し出てくるとは、思っていなかったのではないだろうか。

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