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第18話
「先生だって、仕事があるじゃないですか。仕事を家に持ち帰ることもあるって、前に他の先生から聞いたことがありましたし。忙しい先生の手を煩わせるわけにはいかないですよ」
安藤は体よく断ろうとしているのではなく、本当に由紀也の心配をしてくれているらしい。
「確かに、行事とかもあるんでその時期は特に休みとかも制作したりしてますけど。できる範囲で、手伝わせてください!お願いします!」
由紀也は腿に拳を置き、頭を下げた。ここまで誰かに頼んだことは、初めてだ。
すると、安藤は苦笑した。
「北向先生…休み無くなっちゃうかもしれませんよ?」
「それは、安藤さんだって同じでしょう?」
「…まぁ、そうですけど。本当に、いいんですか?あなたの時間を使っても」
「僕がやりたいんですから、いいんですよ。それに好きな安藤さんと一緒にいられるなら嬉しいですし」
由紀也がそう言うと、安藤は頬をにわかに赤くした。そのことに気付いた由紀也は内心嬉しかった。自分の言葉で、多少なりとも心を動かしてくれたようだから。
「…分かりました。じゃあ、先生の時間が空いてる時でいいんで来てもらえますか?」
言われた瞬間、由紀也は内心で飛び跳ねた。自分をここまで近づけてくれることは幸せだ。
「ありがとうございます!無理言ってすみません」
「いえ、俺も正直助かりますよ。実は誰かアシスタントがいてくれたらと思ってましたから」
安藤が了承してくれた理由はこの際どうでもいいと思う。これからは、精一杯頑張るだけなのだ。
「僕も、精一杯やるんでよろしくお願いします」
「はい。あ、でもこのことは園には秘密にしましょう」
園にバレたら大ごとになるかもしれないが、園長自身も安藤の副業を知っているのだからあるいは寛容なのかもしれない。
「そうですよね。了解です。
「あ、そうだ。うち、あまり報酬は払えないですよ…」
そう言う安藤の顔はとても申し訳なさそうだ。
「あぁ、いえ。僕が勝手に言ったことですし、いらないですよ、何も」
「え、でも…」
「僕が、傍にいたいだけなんで。それに今の僕は刺青のこと分かりませんし、専門的なことはまだできませんから」
助けるといっても、最初の頃は特に雑用などしかできないだろう。安藤の負担が減るように努めなければと由紀也は思っている。
「じゃあ、分かりました。初日は、LINEで連絡しますね」
「分かりました!」
新しい何かが動き出す。由紀也はとてもわくわくしていた。
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