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第21話

ある日、一人の成年がクレイブにやってきた。その頃には由紀也も店を手伝うようになってから2カ月ほど経っていた。 両腕に彫られた刺青のメンテナンスをするらしく、見るとその彼の腕には華麗な和彫りの刺青が施されていた。  安藤と彼は随分親し気に見え、あんなに親しそうでいいなと感じたと同時に、自分と安藤の間にはまだ壁があるような気もする。保育士と保護者、そして掘り師と手伝いという関係上仕方ないのかもしれないけれど。 そしてふと、由紀也はこの青年こそが以前安藤が言っていた頭部も含め、全身に刺青が入っているという人物ではないかと、ピンときた。女性のカンは鋭いというが、男である自分でもこういったカンが働くのだろうかと、由紀也は自分に少し驚いた。 その日はどうということもなく、その青年は帰っていった。由紀也もさして気には留めるほどではない。  腕の刺青のメンテナンスをしていった彼は、翌月も店にやってきた。今度は足の刺青のメンテナンスなのだそうだ。 やはり、安藤とは親しく話している。というよりは、彼の方が安藤に懐いているという感じに見える。20代前半くらいと思しきこの男は、ホストのような雰囲気がある。見た目で判断するのはどうかとも思うが、あるいは本当にそうかもしれない。 しかも彼は、由紀也にちょくちょく挑戦的な目を向けてきた。 『何なんだ…一体…』  由紀也は、安藤の補佐をしながらも居心地悪く感じた。 「ありがとう、亮介さん」  施術終了後、男は安藤に満面の笑みを向ける。 「いや、こちらこそ。またおいで」  安藤も笑顔でそれに応えた。 「うん!」  返事をすると、男は突如由紀也に顔を向ける。 「あぁ。ちょっとあんたに話があるんだけど」 「え?」  由紀也はわけがわからない。 「外来てくれない?」  そう男に促され、由紀也は不安で安藤に目を向けた。 「どうしたの?何かあった?」  すかさず安藤は男に尋ねてくれる。 「別に何でもないよ。気にしなくても大丈夫」  男がそう言ったので、安藤はコクンと頷いてゴーサインを由紀也に出した。

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