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第22話
仕方なく、由紀也は客の男と店の外に出た。閉店時間が近いこともあり、辺りは真っ暗だ。
「あんた、最近入ったんだろ?バイト?」
「まぁ、そのようなものです」
給料はもらっていないので、バイトとは言えないだろうと考え、何とも煮え切らない返答になってしまう。
「…亮介さんとどんな関係?」
説明しようにも、何と言っていいか分からない。何となく、冷や汗が出てくる。
「いや…それは別に…」
別に変な関係でもないのだが、曖昧な言い方しかできない自分が嫌になる。
由紀也が告げると、男はより一層眼光を鋭くした。
「言えない?前もだったけどさ、あんた、亮介さんをチラチラチラチラ見てただろ」
「そ、それは補佐をしなければいけないので、良く見るようにしているだけだと思いますけど…」
苦し紛れに返したものの、驚いた。自分ではそんなつもりはなかったし、気付かなかったが、お客がいる時も自分は安藤に目線がいっていたというのか。
「ふ~ん…。俺さ、亮介さんが好きなんだ。前からな」
「え?」
由紀也の心臓は早鐘を打った。どうしてか、胸がどきどきして、焦る。
「だから、とんなよ。どんな関係か知らねーけどさ」
ますます冷や汗は止まらない。
「そ、そんなんじゃ…ないですから…」
「まぁ恋人できたって聞いてねぇし、付き合ってはねぇだろうけどな。じゃ、そういうことだから」
そう言うと、男は由紀也を一瞥してさっさと帰っていった。
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