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第23話
動揺を隠そうと気を入れながら、由紀也は店内に戻った。すると安藤は心配そうな目で見つめ聞いてきた。
「大丈夫でした?彼、何の用だったんでしょう」
「平気ですよ」
それだけ言った後、どう続けようか一瞬悩んだ。真実をそのまま告げても良いのか。
すると、安藤が口を開いた。
「彼はなかなかにやんちゃですよね」
「け、結構、安藤さんに懐いているみたいですけど」
「もう、10代の頃からここに来てるんですよ、あの子は。弟みたいなものです」
“弟”…。安藤には、彼はそのくらいにしか見えていないのだろうか。それと同時に、やはりあの彼は前に安藤が言っていた『頭を含め全身に刺青の入っている客』というのは、彼のことだろうかと考えた。
「あの人ですか?前に言っていた頭にも刺青が入ってるのって」
「…はい。そうですよ」
やっぱりそうか。本当は男のことをおもんばかると言うのはまずいかもしれないとも思ったが、由紀也は彼に言われたことを白状した。
「やっぱりそうなんですね…。彼に言われたんです。あなたが、亮介さんが好きだから取るなって…」
「…なるほど。そうかと思いました」
「え?」
「実は、以前告白されてるんです。彼に」
想定外というわけではないけれど、由紀也は少しだけ驚いた。確かに彼は直球そうだとは思っていた。考えてみれば、既に思いを告げていてもおかしくはない。
「そう、でしたか…」
それから、彼とはどうなっているのだろうか。そして、理津香はどうしたのだろうか。安藤は理津香のことが好きなのだと思っていたが。
「でも、断りましたよ。ちゃんと」
安藤は曇りの欠片もない笑顔を見せた。
「安藤さん…莉々花ちゃんのお母さんが好きなんでしたよね」
そう言いながら、由紀也の心はチリチリと傷んだ。考えたくないけれど、突きつけられる現実。
「あ、いや…それは…」
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