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第26話

静まり返った夜の店内、ここには自分と安藤しかいない。 安藤が席を立ち、由紀也の後ろに回り抱きしめてきた。背中に安藤の鼓動が伝わってきて、由紀也は幸せを感じる。  少しの間抱きしめられてから、安藤は由紀也から身体を離し、由紀也の両肩を抑えながら「こっちに行きましょう」と言いつつ、施術台へと移動し由紀也の身体を横にした。 一体何をする気だと、由紀也は一瞬焦る。しかし直ぐに、これから何が起ころうとしているのか悟った。 「ちょっ、安藤さん!」 「はい?」  安藤は施術台に片膝を乗せて乗り上げ、由紀也の両腕を拘束し、見下ろしながら満面の笑みで首を傾げた。 「こ、ここでするのはちょっと…」 「そうですよねぇ。この場でなんて、俺も罪悪感はありますよ」  情欲に濡れた目で見下ろし、今すぐ由紀也が欲しいと訴えてくる。 「そうですよ!それに、せ、狭いじゃないですか!」  安藤の目を見ないように顔を背け、真っ赤な顔で由紀也は訴えた。 「あぁ、ウチのは大きめのを使ってるんですけどね」 『そういう問題じゃない』と由紀也は思った。 「でも、できないことはないでしょう?より密着できるしこの方がいい」  安藤は艷やかな笑みを向けてくる。 「いや、ですか?」 「まさか」  由紀也がそう返すと、安藤は『それならいいでしょう』と言うなり由紀也に馬乗りになり、自身は服を脱ぎ上半身を顕にした。 程よく筋肉の着いた、均整の取れた綺麗な上半身だ。 そして、由紀也が目を奪われたのは安藤の左肩に彫られた一匹の龍だった。 「凄い…」  これは、あの雑誌で見た龍だ。日々のことに追われていて忘れていたが、あの人物が本当に安藤だったのだと龍が改めて教えてくれる。安藤の肩に棲む龍の凄味に、由紀也は目を奪われてしまった。

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