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第27話

「こんなのが入ってたなんて…」 「あぁ…この稼業始めてから暫くして、自分の師匠に彫ってもらったんです」  そう懐かしむ安藤の目は、肩の龍を愛し気に見つめていた。 「そうだったんですか…。触ってみてもいいですか?」 「いいですよ、あなたなら」  安藤は、一瞬躊躇ったようだったが、由紀也の要望を聞き入れてくれた。 由紀也は起こし、躊躇いがちにそっと安藤の肩の龍に触れてみる。 そんなはずはないのだけれど、今にも動き出そうとしているみたいに躍動感がある。 「先生も、彫ってみますか?」  いたずらっぽく安藤が笑った。 「い、いや、僕は…」 「ふふ、分かってますよ。あなたは保育士さんですし、見えなかったとしても、やっぱり、ね」 「えぇ」  本当は、少しだけ安藤に一生モノの刺青を入れてもらえたら嬉しいと、由紀也は思った。いつか、そんな日が来ればいい。その時には、自分も龍を入れてもらおうか。  安藤は由紀也の額にキスを落とした。そして、由紀也の目を見つめると少しためらいがちに唇を重ねてきた。甘くて甘くて仕方がない。想いを重ねられた相手とのキスが、こんなにも甘いとは思わなかった。 蕩ける気分に酔っていると、安藤はギュっと由紀也を抱きしめてきた。安藤の腕に包まれていると、彼の気持ちが自分に流れてくるようだ。 「好きです…北向先生…好きです…」  安藤は熱に浮かされたように繰り返す。 「僕もです。あなたや陸斗くんがいてくれたら、何も要りません」  ぼうっと安藤を見つめていると、安藤は由紀也の身体に片手を伸ばし、由紀也が着ているTシャツに潜り込ませながらTシャツを捲っていった。 「あ、安藤さん…」 ゾワゾワっとする感覚は、まるで電流が走るようだ。 「止めないでください…俺はもう我慢できない」  そう言う安藤の手はとても熱い。 彼の手は段々と上へとあがってきて、由紀也の胸にちょこんとついている2つの蕾も露わになった。 「かわいい」  ぼそりと安藤が感慨深げに呟く。

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