27 / 30
第27話
「こんなのが入ってたなんて…」
「あぁ…この稼業始めてから暫くして、自分の師匠に彫ってもらったんです」
そう懐かしむ安藤の目は、肩の龍を愛し気に見つめていた。
「そうだったんですか…。触ってみてもいいですか?」
「いいですよ、あなたなら」
安藤は、一瞬躊躇ったようだったが、由紀也の要望を聞き入れてくれた。
由紀也は起こし、躊躇いがちにそっと安藤の肩の龍に触れてみる。
そんなはずはないのだけれど、今にも動き出そうとしているみたいに躍動感がある。
「先生も、彫ってみますか?」
いたずらっぽく安藤が笑った。
「い、いや、僕は…」
「ふふ、分かってますよ。あなたは保育士さんですし、見えなかったとしても、やっぱり、ね」
「えぇ」
本当は、少しだけ安藤に一生モノの刺青を入れてもらえたら嬉しいと、由紀也は思った。いつか、そんな日が来ればいい。その時には、自分も龍を入れてもらおうか。
安藤は由紀也の額にキスを落とした。そして、由紀也の目を見つめると少しためらいがちに唇を重ねてきた。甘くて甘くて仕方がない。想いを重ねられた相手とのキスが、こんなにも甘いとは思わなかった。
蕩ける気分に酔っていると、安藤はギュっと由紀也を抱きしめてきた。安藤の腕に包まれていると、彼の気持ちが自分に流れてくるようだ。
「好きです…北向先生…好きです…」
安藤は熱に浮かされたように繰り返す。
「僕もです。あなたや陸斗くんがいてくれたら、何も要りません」
ぼうっと安藤を見つめていると、安藤は由紀也の身体に片手を伸ばし、由紀也が着ているTシャツに潜り込ませながらTシャツを捲っていった。
「あ、安藤さん…」
ゾワゾワっとする感覚は、まるで電流が走るようだ。
「止めないでください…俺はもう我慢できない」
そう言う安藤の手はとても熱い。
彼の手は段々と上へとあがってきて、由紀也の胸にちょこんとついている2つの蕾も露わになった。
「かわいい」
ぼそりと安藤が感慨深げに呟く。
ともだちにシェアしよう!