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ローションを手に取り、四つん這いの礼央の後孔へ、指を挿れる。
入り口の感触が、見た目や想像より、やわらかい。
「礼央、いつも自分でこうしてるの?」
一瞬沈黙したあと、小さく「うん」と言った。
「男の人が好きって言ってたもんね。誰かにして欲しかったんだ」
「……ん、そう」
クチクチと音を立てるように出し挿れしてみたら、礼央の息が荒くなった。
「ん、ん……っ」
「どうすると気持ちよくなるか教えて?」
「そこ、のちょっと手前の……ぁ」
くいっくいっと腰を揺らすのが、可愛い。
「ぁあッ、ん、……んっ、はぁ」
多分、良いところを見つけた。
同じ場所を何度も押してみると、その度に悩ましげな声を上げる。
ただ、やわらかくはあるけれど、だいぶ狭くて、挿れられるほどならすのにはまだまだかかりそう。
耳元で、吹き込むように熱っぽくささやいた。
「礼央……俺だいぶ限界なんだけど。早く挿れられる裏技とかない?」
「……限界?」
「挿れたい。礼央に合わせてるわけじゃないよ? 可愛いお尻の中が気持ちよさそうだなって思ってるだけ」
耳の穴の中にねっとりと舌を入れたら、礼央は、全身を震わせて甘い吐息を漏らした。
「そこの棚の中に……エッチなおもちゃ、入ってて……」
消え入るような声で言ったきり、真っ赤な顔をして黙ってしまった。
言われた棚を見てみると、アナルパール。
「これも使ってるの?」
「……寂しい時、使うやつ」
泣きそうに眉根を寄せていて、その表情を見たら、孤独だったんだろうなと思った。
孤独に耐えきれない時に、自らこれを体に埋め込んで……。
「ふたりで使ったら寂しくないよ。してあげる」
くぽ、くぽ、と、ひとつずつ挿入していく。
「ん、……ん」
「いっこずつ飲み込んでる。えらいね」
「ぁ、昌也さん……いつもとなんか、ちがう……」
「気持ちいい?」
「うん、……ぅ、気持ちいい、あ」
口を半開きにし、「ぁ、ぁっ」と小さく喘ぐ。
「じゃあ、抜くよ?」
こくりとうなずいたところで、一気に引き抜いた。
「ぁああああッ」
絶叫に近い大声を上げる。
十分に広がった穴は、ヒクヒクと欲しがっているようだ。
「じゃあ、本物の、おもちゃじゃないやつ。挿れてあげるからね」
「ん、欲し……っ」
コンドームをつけ、ぐっとあてがう。
ずぶずぶと埋めていくと、中の締まり具合と温かさで……それだけで危なかった。
「……っ、礼央。中、すごく気持ちいい」
「ん、はあっ、……本物、昌也さんの、はいってる」
「そう。欲しかったやつだよね?」
「……ん、んっ、動いて、突いてっ」
ゆるゆると前後に動かすと、中がうねって絡みついてくる。
「あー……礼央。ほんとに気持ちいい」
「んぁ、はあっ、……あぁっ、ん、ぁっ、昌也さんっ」
細い腰を両手で押さえつけ、律動を速める。
小刻みに揺らしたら、首をぶんぶんと横に振りながら嬌声を上げていて……こんなのは反則だ。
「ん、昌也さんっ、はあ、あ……っ、好き、好きっ、ごめんなさい」
礼央が泣き出した。俺は動きを止め、ぐっと深く繋がったまま抱きしめた。
「謝らないで。大丈夫だから」
落ち着くよう諭したけど、礼央は泣きながら訴えた。
「好きです。昌也さん。オレみたいな暗いの、誰も優しくしてくれない。昌也さんが優しくしてくれたのは、放っておけないって、ただの責任感とか義務感だったのかも知れないですけど、でもオレはそれで好きになっちゃいました。だだこねたらエッチしてくれて、ごめんなさい。でも好きです。優しくされてすぐ好きなんて、信じてもらえないかもしれないですけど。ごめんなさい。好きです」
ぐずぐずと泣く礼央の頭をそっとなでる。
「好きになってくれてうれしいよ。最初にエッチしたいって言われた時は、本当はちょっと困っちゃったけどね。でもいまはうれしい。何でか分かる?」
礼央は、黙って首を横に振る。
「言霊だよ。俺、礼央のこと何度も可愛いって言った。そしたら、礼央のことがどんどん可愛く思えてきた」
ぎゅうっと抱きしめた。
どんな顔をしているかは分からないけれど、泣き声はいくらか落ち着いたように思う。
「好きなら好きって、もっと言っていいよ。言葉にはね、霊 が宿る。それが言霊。俺がこの世で最も尊敬するひとが言ってたんだ。だから間違いない」
礼央は、少しためらったあと、控えめな声でつぶやいた。
「好き」
「俺も言ってみていい? 言ったら本当になるかも」
「言ってください」
「ん……でも、顔見て言いたいかな。続きして、終わったら言う。それでもいい?」
「はい」
短く返事をした礼央は、ねだるように腰を押しつけてきた。
「奥、いっぱい突くからね」
腰を引き寄せ、勢いをつけて、最奥をガンガンと突く。
「んッ、あっ……あぁッ、んっ、はぁ」
「……っ、礼央、中でイけるの?」
「おもちゃでっ、イッたこと、ある……っ、あぁっ」
「じゃあ俺のでもイけるかな」
中が、うねるように締め付けてくる。
礼央が嬌声を上げるたびに、ぎゅうっと絡みついてきて、気を抜くと簡単にイッてしまいそうだ。
「気持ちよくなりたかったらどうするの?」
「……、きもちいいって言う」
「そうだね」
小刻みに腰を振る。
「んぁっ、あっ、気持ちいい、あッ……きもちい」
「可愛い……たまんないな」
「あ、ぁ、そこ……そこ気持ちいい」
「ここ?」
壁をえぐるように手前から奥へ打ち込んだら、ひときわ高い声を上げた。
「ぁああッ、ん、あぁ……ッ、きもちい、あん、ンッ、……も、ああ」
「イキそう?」
「はあ、あっ、イッちゃう、はあ……っ」
「いいよ。いっぱい気持ちよくなってね」
パンパンと、肌の当たる乾いた音がする。
自分でも頭がおかしくなったのではないかと思うくらい、狂ったように腰を打ち付けていて、下腹部に熱が溜まっていく。
「や、も、無理……ぁあっ、イッちゃ……」
礼央が、背中を弓なりにそらせた。
「あっ、イクッ!……イッ、ぁああっ……あああ……ッ!…………!……っ、あぁッ」
「っやば、っ……」
ビクビクと跳ねる体を押さえつけて、欲望のままに腰を振る。
「あー……、イクよ、礼央っ、ぅあ…………ッ……!……っ」
ドクドクと脈打つのが、自分でも分かった。
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