38 / 72
2★
ワンピース型の病院着に着替え、ベッドに腰掛ける。
ふたりくらい余裕で眠れそうな広いベッド。
頭側には大きな機械やボタンがあり、天井から酸素マスクがぶら下がっていたりと、精密機器が揃う特殊な病室みたいな感じだ。
緋室さんは、コップと薬を持ってこちらにやってきた。
「それではこちらをお飲みください」
「はい」
緊張気味に、白い錠剤を受け取る。
ぱくっと口に入れると、無味無臭だった。
そのまま水で流し込む。
口を開くよう言われたのであーんと開けると、緋室さんは飲み込んだのを確認し、腕時計を見た。
「17:02、実験を開始します。横になって、楽にしていてください。隣で見ておりますので、気分が悪くなったり何かありましたら、遠慮なさらずにおっしゃってくださいね」
緋室さんはゆっくりと頭を下げ、ガラスの向こうの部屋へ。
防音扉のような頑丈なドアが締めると、ガチャンと音がした。
施錠されたらしい。
見られているというのは居心地の悪いものだが、それが仕事なので、仕方がない。
ベッドに横たわり、目をつぶる。
チラッとガラスの向こうを見ると、緋室さんは、忙しそうに何かに記入をしていた。
暇なので、夏休みに何をしようかと考える。
何せ、2日で8万だ。
ちょっとした旅行にも行けるし、普通の部屋に移ったら、どこがいいか調べよう。
もしかしたら海外もありえるかも知れない。
そんなことを考えて、10分ほど経ったところで、体に異変が起き始めた。
やたらに暑い。息が苦しくて、呼吸が浅くなっていく。
緋室さんに知らせるべく起き上がろうとするも、体に力が入らない。
「ぁ……、」
上擦った声を漏らしながら、なんとか首だけ緋室さんの方へ向ける。
異常に気づいたらしい緋室さんは、そばにあったマイクを掴んだ。
『大丈夫ですか?』
「……、ぁ、あっ……」
うまく口が動かせず、言葉にならない。
緋室さんは、俺の様子を目視で確認したあと、手元のパネルを操作した。
途端、ベッドの柵部分から出てきた輪のようなものに、手足を拘束される。
何だ? 何をしている……?
回らない頭でパニックになりながら、手足を動かそうとするけれど、どうにもならない。
体はどんどん熱くなり、息切れが激しくなっている。
長時間マラソンをしているみたいな感覚。とにかく苦しい。
「ひ、ひぅぉさ……っ」
やっとのことで出た声に、愕然とする。
聞いたことのないような甘ったるい声。
自分が発したとは信じがたい……まるで、女の喘ぎ声みたいな。
「ぁ、んっ……、ん」
必死に訴えると、緋室さんは、眉をひそめてマイクを手に取った。
『遠隔で診察します』
頭側にあったアームが伸びて、俺のパジャマのボタンをひとつひとつ外していく。
全てはだけたと思ったら、パンツまで脱がされた。
「んンッ」
パンツが引っかかって気づいたが……完全に勃起している。
空気にさらされたら、それだけでうずいた。
『苦しいかも知れませんが、なるべくゆっくり、吸って吐いてを繰り返してください』
必死で深呼吸をする間に、別のアームが伸びてきた。
上半身にドロっとした液体をかけられたと思ったら、ローラーのようなもので上半身のあちこちをくまなくなでられる。
「ぁ、あっ……んっ」
コロコロと、ろっ骨の上を行き来するその感覚で、身悶える。
お腹のやわらかいところが押されて体がこわばり、乳首の上を潰すみたいに何度も往復されたら、ビクビクと体が跳ねた。
「んぁっ、あ……ッ、やら、ぁあっ」
刺激されて、身を固くする。しかし、すぐに脱力して、動けなくなる。
その繰り返しで徐々に気力が削がれ、正気が保てなくなってきた。
途端、目が冴える。
感覚が過剰なくらい研ぎ澄まされて、少しの刺激でも電流が走ったみたいに感じてしまう。
「ぁああっ、ぁ……きもちぃ……ッ、たすけてっ」
すがる思いで緋室さんを見ると、舌なめずりをしてにんまりと笑っていた。
ともだちにシェアしよう!