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翌週、正式な授業が始まった。
手はず通り、暗記と集中力を高めるような内容から始める。
「緊張してる?」
「すいません。ちょっと人見知りで。何話していいかわかんなくて」
「そっかそっか。別に無理して話さなくてもいいからね。ただ、リラックス状態の方が勉強がはかどるのは確かなので、そうだな……ちょっと脳トレっぽいゲーム、してみる?」
お互いの手や顔に触れるような、簡単な遊び。
ボディタッチへの抵抗感を和らげる策だ。
5分ほどやってみたら、それだけでかなり打ち解けた。
「じゃあ、いまこの脳が活性化した状態で、ちょっと暗記やってみようか」
前回把握した学力を元に、難易度のバリエーションを持たせたプリントを、いくつも用意してきた。
その中から、現在の誠の学力レベルのものを渡す。
素直に音読しながら覚えた誠は、70点をとった。
「うん、悪くないけど、もうちょっとやれそう。負荷を足してみようか」
「負荷って何ですか?」
「あえて集中力が散漫になりそうなことをするから、頑張って覚えてくれる?」
いすに座りプリントを手に取った誠の後ろに回り、口の中に指を入れる。
「ぅあ……っ!?」
「びっくりさせてごめんね。でも、だまされたと思って、ちょっとこのまま覚えてみて?」
必死でプリントを見る誠の口の中を、あちこち探る。
舌をぐにぐにと押すと、苦しいのか、息を荒げた。
勃起しそうになるのを、気合でこらえる。
「はい、1分。大丈夫?」
「げほ、……ん、平気です」
ちょっと涙目。
内心ほくそ笑みながら、一番簡単なプリントを渡した。
そして、すらすらと解く誠は、自分の解答に驚いていた。
「先生、できました」
「どれどれ」
じーっと眺めたあと、満面の笑みで頭をなでた。
「すごいよ、82点だ」
「え! すごい!」
「手応えあったでしょ」
「あ、はい……なんか、暗記のときあんま集中できてないかなって思ったんですけど」
「たぶん、全然集中できてなかったと思うよ。でもその分、指を抜いたら、いつもより集中できたんじゃないかな?」
めちゃくちゃな理論だ。
そんなことあるわけないのだが、素直かつ俺のことを信奉し始めている誠は、こくっとうなずいた。
「あの、もっとして欲しいです」
心なしか、顔が赤い。
既に快楽の兆候を感じているのだろうか。
「ちょっと、ベッドに腰かけてもいいかな?」
「あ、はい、どうぞ」
「じゃあ誠くん、僕を背もたれにするみたいな感じで、ここに座ってくれる?」
脚を開いて間をぽんぽんと叩くと、誠は、おずおずと座った。
そして、バックハグをしつつ、そっと口の中に手を入れる。
あえてくちゅくちゅと音を立てるように舌をこねながら、空いた片手でさりげなく、服の上から体をなぞった。
「……は、……、」
明らかに体温が上がっている。
太ももの内側にそろそろと手を這わせたら、小さく上擦った声を上げた。
「はい、暗記タイム終わり。1分休憩して、プリントやってみよっか」
しかし、誠は動かない。
「ん? ごめん、平気?」
「ぅ……はぃ」
何かをこらえるように、密かな深呼吸を繰り返している。
ピンときた俺は、再び太ももをなでた。
「ぁ、や、せんせ……」
「もしかして、ちょっと気持ちよくなっちゃった?」
はっとした顔をしたあと、ふるふると首を横に振る。
「ん、恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。五感ではないけど、こういう感覚でも効果はあるから」
嘘っぱちの笑顔で安心させ、休憩の間も、そろそろと体をなで続ける。
「ぁ、あ……せんせ、ゃ……」
「なるべく集中できるようにしてみて?」
「む、り……っ」
無理と言いつつ、逃げようとはしない。
真面目なのか、単に快楽に負けているのか。
ともあれ、1分経ったので放してやり、机に向かわせてテストをすると、高得点を取った。
「誠くん、すごいよ。まだ15分くらいしか授業してないのに」
「ほ、ほんとだ……」
信じられないような目で、プリントを見つめている。
不自然のない程度に難易度を落とした問題だから、点が取れるのは当たり前なのだが。
「もしかしたら、誠くんは触覚が優れているのかもね。これを続けていたら、集中力が高められるかも。この方法でやってみる?」
「あ、はい。お願いします」
1時間たっぷり、誠の体をなで回した。
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