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 その日の深夜。 「うわあっ!」  悪夢で飛び起きた。  あきも起こしてしまったらしく、ぼんやりしたまま聞いてきた。 「……ん? どうしたの?」  かすれ声。  俺はなんだか不安な気持ちのまま、あきを見下ろして答えた。 「嫌な夢見た……」 「どんな?」 「さっきの犬が、売れちゃっている夢。次の休みに見に行ったら、あのショーケースには別のダックスフンドが寝てて、あきは絶望してるし、俺は『取り返しのつかないことした』って呆然と立ち尽くしてて」  夢が潜在意識の表れだとすると、たぶん俺は、検討しているうちに売れちゃわないかが心配なのだと思う。  そして、そのせいであきがショックを受けることを、恐れている。  たかが夢、と言ってしまえばそうなのだけど、どうにも嫌な感じが抜けない。  再び布団にもぐって、あきの胸におでこをくっつける。  あきは、いいこいいことなでてくれた。 「心配だね、あしたもう一度見に行こう?」  夏休みとはいえ、平日だから、あきは普通に仕事がある。  仕事のあとにペットショップに行くなんて、どう考えても負担だ。  でも、次の休みまで待っていたら、俺は毎晩飛び起きるような気がするし、実際、本当に売れてしまうかも知れない。 「あき。俺、あの子飼いたい。いいかな?」 「うん。そうしよう。あしたお店に電話して、飼うつもりだから売らないでおいて欲しいと伝えておくね」 「ありがとう。よかった」  飼いたいと言い出したのはあきなのに、俺の方が欲しがっちゃうなんて。 「……衝動買い過ぎる?」 「ううん、僕はそう思わないよ。夢に出るほど惹かれたんだもの。あの子は、僕たちの家族になる運命で生まれてきてくれたんだと思う」  あきはしばらく俺の頭や頬をするするとなでていた。  ……と思ったら、服の中に手を滑り込ませて、背中をゆっくりと、這うように愛撫し始めた。 「……ん、ん……」  身構えていなかったし、眠たくてぽわぽわしていて、すぐに体温が上がる。 「ん、……あき、」 「見てたら可愛くて。いい?」  こくっとうなずくと、キスされた。そのまま、ガラ空きののど仏へ。  体がすぐに反応してしまう。 「ぅ、もう勃っちゃった」 「……ほんとだ。ついさっきまで、わんちゃんの話してたのに。ちょっと触られただけでエッチな気持ちになっちゃうの?」 「ん、んっ、……いじわる言わないで。こっちも触って」 「まだダメ」  ねだるように腰をくねらせて、あきの太ももに押し当ててみたけど、下は触ってくれなかった。  その代わり、Tシャツをたくし上げて、乳首に口をつけてきた。  ちゅうっ、ちゅうっと強めに吸われて、身悶える。 「はぁ、……ぁ、ねえ、ん……、下、きつい。触ってほし……」  あきが、服の上から、形を確かめるように包み込む。 「ほんとにガチガチ。想像しちゃった?」 「……あきが触ったとこ、全部切なくなる」 「甘えたさん」  俺の服を脱がすその手つきさえ色気を帯びていて、甘い吐息が漏れてしまう。  あきはどうかと思って見てみたら、艶めかしい目で俺を見下ろしていた。 「深澄は、可愛い顔して欲情するとこうなんだから、たまらない」 「……どんな顔してる?」 「早くお尻のなか気持ち良くして、エッチなことしてって、顔に書いてある」  ド直球なことをささやかれて、耳まで熱くなる。  あきは俺のペニスをしごきながら、トロトロのローションを塗り込むように、お尻をほぐしはじめた。  ぐちぐちと粘着質な音が、静かな部屋に響く。 「……ぁ、いきなりどっちもは、んぁ」 「嘘。本当はどっちも欲しいでしょ?」 「あ、ぁ……ん、」  あきの指摘通りで、本当は、どっちもされてめちゃくちゃ気持ちいい。  思わずうわずった声を上げると、あきは、愉快そうに笑った。 「正直で可愛いよ」 「ん、……っ、あぁ」  俺がビクビクと跳ねるのも(いと)わず、手前のいいところを何度も刺激して、まるで反応を楽しんでいるみたいな。  普段は底抜けに優しいあきが、俺だけにチラッと見せる、別の顔。  十分にほぐれたのを確認すると、恥ずかしいくらいに脚を持ち上げられた。 「挿れるよ?」 「ん……きて」  あきが、ぐぐっと体重をかけると、自然にずぶずぶと奥まで入ってきた。 「ぅあ……」  ぬるぬると出し挿れするのを、いやらしく見せてくる。 「ぁあ、っはあ、……っ」  淫らな腰つきだ。  均衡の取れた体から反り立つそれが、出たり入ったりしていて、視覚からの興奮がすさまじい。  腰を両手で掴まれた……と思ったら、あきは小刻みに体ごと揺らし、いいところへ集中的に当ててきた。  興奮と快感でやばい。 「あ、っ……はぁ、あぁッ、きもちぃ」 「もっと言って? 気持ちいいのどこ?」 「ん、んっ……お尻のなか、お腹、ビクビクしちゃぅ」 「乳首も勃ってるよ。自分で触ってみて?」  恥ずかしく思いながらも、刺激が欲しくて、自ら乳首をくりくりといじってしまった。 「はぁッ、……っああ、ん、んぁ」 「自分でしてるの、やらしいね」  言われた瞬間、理性が飛んだ。  乳首をいじくりながら、自分のペニスに手を伸ばし、おずおずとしごき始める。 「ぁあ、あ……」 「深澄、すっごいエロい顔してる。欲張りさんだ。自分で気持ちいいことして」  恥ずかしいことを言われているはずなのに、手が止まらない。  乳首は乱暴にぎゅうぎゅう引っ張っていて、爪の先で強くカリカリと刺激する。  ペニスは、誰もいないところでひとりでしてるときみたいに、我を忘れて夢中でしごく。  お腹の中は、あきがえぐるようにしていて、ずくずくと熱くなってくる。 「い、イッちゃいそ……ぅ」 「うん。中はたくさん突いてあげるから、自分でしごいて」 「ぁ、あ、きもちい、んッ、んん……あっ、…………ぁあッ」  ビクンビクンッと体が大きく跳ねていて、手は本能的にぐちゅぐちゅとしごいているから、絶対みっともない顔してるって分かってるのに。 「止まんな……ぁあっ」 「いいよ、そのまま」 「ぁあッ、イクッ……っイッ、ぁああっ!…………ッ、……っ……!……」  大量に、吐き出す。長く長く絶頂に浸った。  やがて出し切ると、なんだか分からないけれど、たくさんエッチなことを言われながら、力の入らない体の奥で、あきも吐精するのを感じた。  まどろみのなか、あきが、俺の頭を優しくなでる。 「わんちゃんが来たら、こんな風にたくさん喘げないかもよ?」 「なんで? びっくりしちゃうから?」 「そう」  目を閉じ、想像する。  しかし、それはできない相談だなと思った。 「無理。声、出ちゃうもんは出ちゃうもん」 「可愛い」  あきは俺のおでこにキスを落とし、少し考えたあと、穏やかな声で言った。 「そうだね。賢い子だったし、ちゃんと伝えれば、きっと僕たちが仲良くしてるのも分かってくれる」 「……あした、迎えに行くの楽しみだな」  あきの温もりを感じて、そのまま眠りについた。

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