ってゆーかさ、香月さん。学校では確かに俺たちが付き合ってることが知られてるけど、それでも俺、香月さんの知らないとこで告白とかされてるからね？ 油断しないでね。 香月さんが好きで付き合ってるけど、ちょっといいなぁ…、って思う人だっていたし。浮気は俺が嫌だからしないけど。 まーでも、それ言ったら香月さんもそうだろうな。俺の知らないとこで告白とかされてんだろうな。 真面目な性格の人だから、浮気とか二股とか、そういう心配はしてないけど。 「香月さんは？ 俺のこと好き？」 可愛い子ぶって甘えて。そういう自分も好きだから疲れはしない。 でも、まるごと全部俺を愛してほしいとはやっぱり思うよ。 「っそ、んなこと聞くもんじゃないっ」 恥ずかしがる香月さん。 俺は本当は、こういうとこもちょっとだけ不満。 別に毎日 好きだ！って言わなくてもいいけど、こういう時くらい言ってほしい。好き？ って聞いたら、当たり前だろ？ くらい返してほしい。 めんどくさい恋人にはなりたくない。でも、めんどくさいことを言いたくなる時がある。 「残念。聞きたかったのに」 可愛い俺はしつこくしない。 ちょっと肩をすくめて、ちょっと拗ねてみせる。 ただそれだけ。 「その…そういうのは、あまり軽々しく口にするもんじゃないだろ」 この人 江戸時代か何かの人なのかな。 言えよ。聞きたいんだよ、こっちは。 俺のこと好きって言えないの？ それならもーいいよ。バイバイ。――って言えないのが、惚れたつらさかなぁ。 「…俺は香月さんが好きだから『好き』って言うのに…。軽くないもん…」 「あっ、いや、悪い。そういう意味じゃないんだ」 絡めていた腕をするりと外して、俺は足を速めた。 「蜜っ」 慌てる香月さんの声。それでも足は止めない。 …たまに。 本当にたまにだけど、香月さんにイライラすることがある。もちろんそれは俺のワガママなんだけど。 「蜜、待て」 香月さんに腕を取られた。 「触んないでよ。俺 怒ってるんだけど」って言えたら楽なのに。 でもそういう俺を、香月さんはまだ知らない。教えてもない。 「悪かった。だけど俺は、軽々しくそういうことを言えないから」 「…言葉がほしい時だってあります」 「それは…そうかも知れないが…」 「じゃあ俺も言わない」 「えっ？」 えっ？ じゃねーよ。 香月さんと同じことするって言ってるだけじゃん。