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第9話
「どうした?」
千歳がなだめるように俺の背中をとんとん、と優しく叩いて、俺はそれに甘えるように千歳の肩に頭を乗せた。
千歳と百とは小さい頃から一緒にいるから、距離が近い。この2人といると安心する。
「俺はさぁ、香月さん以外に言ってくれる人がいるから、毎日 可愛いとか好きだよーとか言ってくれなくてもいいんだけどさ」
「うん」
「でも『好き?』って聞いたらさぁ、その時だけは好きって言われたいんだよね。千歳、俺のこと好き?」
「超絶ワガママが可愛いと思えるくらいには好きだな」
「何それ、俺のこと超好きじゃん」
千歳、ほんとにいい男。
「百は? 俺のこと好き?」
「千歳に先に聞くのを面白くないと思うくらいには愛してるぞ」
「うわーん! 百 好きだよー!」
千歳から百へダイブ。百はしっかり受け止めて、俺の髪を撫でてくれる。
百もいい男。
「それで、先輩は何て?」
俺をまたイスへ座らせながら、百が聞く。
「軽々しく口に出すもんじゃないんだって~」
「どんだけ出し惜しみしてんだ、あの人」
百が鼻で笑う。
百って香月さんのことほんとに気に入らないんだね。
「じゃあもう俺も言わな~い。って拗ねたら、聞き分けが悪いとか言うんだよ? 好きって言ってほしいだけなのに。そりゃあさぁ、強要して言わせるもんでもないけどー」
「誰かに取られねーと分かんないんじゃん?」
「どうかなぁ。だってその後 俺が小花衣先輩とちょっと話しただけでヤキモチ妬いて、随分仲がいいんだな、とか言ってきたけど、でもぜーんぜんだもん」
ただ『好き』って言ってほしいだけなのに。付き合ってるのにそれも叶わないの?
「蜜は、それでも先輩が好きか?」
千歳の声に、俺はそっちを向く。
それでも好きかと問われると。
「…まぁ、好きかな」
不満はあるし、こうやってイライラすることだってある。だけど、それってみんなそうなんじゃないのかな。
どんなに好きでも、相手に不満を覚えたりイライラしたり、そういうのってあると思うし。
ケンカしながらも仲良くなってくもの、なんじゃないの? 違うのかなぁ…。
「…付き合ってるのに満たされないこともあるのは分かるんだけど…香月さん以外は言ってくれるのに、肝心の香月さんが言ってくれないんじゃ俺ずっと満たされないままじゃん…。そんなのやだぁ~」
「他の男を好きになれば解決するんじゃん?」
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