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第11話
百も千歳も俺を甘やかしてくれるけど、それは恋ではない。愛ではあるけど、友愛だし。
きっといつか、ふたりにもそれぞれ愛したい大事な人ができるのは分かってるんだ。
でも、俺はまだつい甘えてしまう。
「…もーすぐオイル終わっちゃう」
「今度はどれがいい?」
「オレンジの花のやつ。あれ好き」
「オレンジのな」
百の実家は、化粧品会社を経営している。お母さんがすごいやり手の社長さんなのだ。なので、百とか百のお姉さんがボディスクラブやクリーム等々…色々くれるのをありがたく使わせてもらってる。
…話が逸れたね。
「俺は粗末に扱われてるとは思ってないよ? ただ、好きな人に好きって言われたいだけなのに…」
「自分の理想ばっかで肝心の言葉もねぇのはどうなんだよ。どう思う? 委員長」
さっきからただ静かにこっちを窺っているクラスメートを代表して、委員長にジャッジを委ねる百。
「そうだな」
委員長は重々しく頷いた。
「有罪だ」
「ほらな?」
「ちょっと委員長ー」
「ははは、膨れても可愛いだけだぞ」
「聞いたか? 委員長でさえさらっと『可愛い』って言うのに、俺あの人が蜜に『可愛い』とか言うの聞いたことねーぞ。忍足先輩とか中矢先輩の方が『可愛い』って言ってくれてんじゃねぇの?」
「やめてよ百ー、事実を言わないで」
俺は千歳の肩に頭を押しつける。
分かってたよ。香月さんってば、『好き』はおろか『可愛い』とかも言ってくれないんだよ! その服 似合うな、とかは言ってくれるけど! くそー!!
今朝もそうだったけど、忍足先輩とかは『可愛い』って言ってくれるんだよ!
「香月さんは言葉よりも行動の人だもんっ」
「してもらったこと挙げてみ?」
「誕生日プレゼントもらったし! 告白も先輩からだったし、えーっと…出かける時はいつも…あー…それは俺からだ…。えっとぉ…」
黙って聞いてるみんなの顔がどんどんしょんぼりして行く…。
一番しょんぼりしたいの俺だよ!! 改めてショック受けてるんですけど!
待って待って、そんなはずないから。俺ちゃんと香月さんに愛されてるから。思い出せ! 絶対何かあるはずだから!!
「…っお弁当作って欲しいって言われた…」
「それ嬉しいか? 厚かましくね?」
「…お昼一緒に食べるしっ」
「誘ってんのいつも蜜じゃん」
「…ほ、放課後、途中まで一緒に帰ってくれるしっ」
「寮まで送ってくれるやつもいるけどな」
知ってる!!!!
ちょっと羨ましいな、って思ってたもん!
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