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第13話

百が茅ヶ崎の口にガムテープ貼った。 そういう容赦ないとこ好きだよ、百。 でもね、茅ヶ崎がめっちゃハート飛ばして百を見てる気がするの。そのハート、ちゃんと叩き落としてね。 「百、ガムテープはやりすぎだろ」 「あいつ悦んでるんだからいいんじゃねーの?」 「何で悦んでるんだ。変態か」 今千歳の中で、茅ヶ崎=変態の図式が成り立った。 「茅ヶ崎は確かに変態だけど、変態の言うことも一理あるかもしれないぞ…」 「そうだよな…」 みんなして…そういうこと言うの。 クラスメートが茅ヶ崎の言うことに同意して、頷き合う。 俺はそれをとっても面白くない気分で見るしか出来ない。 だって反論できないんだもん。香月さんが俺にしてくれたことって、思い出したらほんとに…少なくて。お弁当作って欲しい、みたいに、今度こういう服を着て欲しいとか、髪は染めない方がいいとか言われたことあるけど…。 あれ? もしかして俺、ほんとに香月さんの理想を押し付けられてるだけ? 「……別れる」 「蜜、少し落ち着け。今は色々考えすぎて混乱してるだろうから」 千歳が俺の髪を優しく撫でて、同じ手であやすように背中を撫でる。 「先輩から誘いがあるかないかはともかくとして、今日は一緒に食べるのをやめておいたらどうだ?」 「どうすればいいの…?」 「蜜をこんな気持ちにさせたんだから、全員で責任とってくれるだろ。なぁ?」 千歳が視線を投げ掛けると、クラスメートはみんな敬礼した。 「…俺、今日のお昼はフルーツサンドとアマトリチャーナとグラタンとカルボナーラとカツサンドをちょっとずつ食べて、バジルサラダも食べたいし、ミネストローネもちょっと食べたいし、プリンとデラックスパフェも食べたいし、ガトーショコラも食べたい。あと温かい紅茶欲しい。あ~、購買のチョコ食べたいなぁ…」 「買って参ります!!」 「フルーツサンドの担当は、山田。アマトリチャーナは佐藤。グラタンは鈴木。カルボナーラは…」 「はい! 俺!」 「カツサンドは俺!」 「じゃあ俺はサラダで!」 にわかに騒がしくなる教室の中。 俺はちょっとぼんやりして千歳に寄りかかっていた。 香月さんのことが好きなのは…本当。だけど、香月さんの心が見えないのも本当。 ただ可愛くて甘えん坊で、でも自己主張はちょっと控えめで、聞き分けのいい恋人が欲しいなら…それは俺じゃなくてもいい。

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