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第16話

香月さんのこと、か…。 「今まで甘やかしすぎたんじゃねーの? 何でも理想に合わせてやって、そのくせあっちは何も叶えてなくね?」 大きなカツをお皿の上でざっくり切る百。カレーを絡めて俺の口へ。 学食のカツおいしいから食べる。 あ、口に物入ったから喋れないぞ。 「藤くんはぁ、笹山先輩嫌いだねぇ~」 茅ヶ崎は百を藤くんと呼ぶ。名字 藤棚だからね。 「嫌いだねぇ」 百が茅ヶ崎の口調を真似て、からりと笑った。 「須賀谷くんはぁ~?」 話を振られた千歳は、炊き合わせの里芋を割りながら茅ヶ崎を見た。 「俺は特に。蜜が粗末に扱われなければどうでもいいな」 「どうでもいいって嫌いよりひどくね?」 「3人って幼馴染み? みたいな感じなんだよね? めちゃめちゃ女王様じゃなくって相瀬くんのこと大事にしてんの何でぇ~? 小さい頃何かあったとか?」 「おい、茅ヶ崎。あまり踏み込むなよ」 委員長が咎めてくれたけど、まぁ別にいいかと思った俺は、咀嚼したカツを飲み込んでから口を開いた。 「俺ってめちゃめちゃ可愛いじゃん?」 「うん~。悔しいけど色白だしめちゃめちゃ可愛いよねぇ。顔は」 「俺もだけど茅ヶ崎も性格はめちゃめちゃ悪いから自覚した方がいいよ。小さい頃からめちゃめちゃ可愛いからさぁ、危険が色々あったんだよね。連れ去られそうになったりとか、変なおじさんとか高校生とか中学生のお兄さんに声かけられたりすることもあって」 「え、何それ怖。イタズラ目的?」 「多分。んで、その度に一緒に遊んでた千歳と百が助けてくれて、大人呼んでくれたりバットで殴りかかってくれたり、目に砂投げつけてくれたり、目にタバスコ混ぜた水鉄砲食らわせてくれたり」 「最後のやつ、良い子は真似しちゃいけないやつだね~」 懐かしいなぁ。いや、おっさんとかは全く懐かしくないけど。 「危ない目に遭う相瀬くんを見て来たから、守らなきゃ!って気持ちが強くなった感じ~?」 茅ヶ崎の問に、千歳と百は顔を見合わせた。 「それだけじゃないけどな」 「蜜の危機管理能力も不安だったし」 「え、ちょっと百、それどういう意味?」 確かに2人には何度も助けてもらったけど。 でも俺もちゃんと成長してるし。多分! う~ん…大きな声では言えないけど、初めて付き合った人に騙されそうになったことは…ある、けど。

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