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第17話
呼ばれて行ったら、当時の彼氏とその友達が何人か一緒にいたんだよねぇ。「こいつ俺のこと好きだから何でも言うこと聞くよ」とか言って、全員相手しろよ、って言われたんだっけ。
てめぇが俺のこと好きなんだろ、ってビンタ食らわしてやったけど。
あの時助けてくれたのも2人だっけ。
「…男 見る目なくてほんとごめんね」
「急にどうした」
「熱でもあんのか?」
ないよ。あの彼氏最悪だったな、って思い出したんだよ。
結局えっちとかする前にあんなことがあって即別れたけど。しばらくしつこくされてたけど、それもパタッとなくなって。多分それも、2人が何とかしてくれたんじゃないかなー、って俺は思ってる。
っていうか、香月さんマジで来なくない?
あり得ないんだけど。俺 放ったらかされてない?
えっ、俺から行動しないとこんななの?
ほんとにどうでもいいと思われてんの?
香月さんが来ない現実を受け入れると、大きな不安がぶわりと襲ってきた。
「相瀬? どうした? 食べないのか?」
委員長が不思議そうな顔して俺を見ている。
「…食べる」
食べるけど。
カツサンドを手に取って一口。おいしい、けど、それ以上進まない。
「蜜?」
「…香月さん、俺のこと好きじゃないかも…」
両隣が静かになる。
視界の隅で、委員長たちが慌てたような顔をしてアイコンタクトを取ってるのが見えたけど、俺は食べかけのカツサンドをお皿に置いてガトーショコラにフォークを入れた。
甘いものはいつも気分を上げてくれるけど、今日はそれも効かないみたい。パフェも、プリンも、おいしいのに。
「…俺がいけなかったのかなぁ…。最初からワガママなとこ見せとけば良かったのかな…。聞き分けのいい可愛い子のフリしてないで、いや、可愛いけど、猫被ってないで、色々…」
百の手が、俺の食べかけのカツサンドを掴む。
それをそのまま自分の口へ。
千歳の手が、パフェの長いスプーンを取った。
真っ赤なイチゴをすくって、俺の口へ。
「蜜、あーん、は?」
「あ」
言われるままに口を開ける。
甘酸っぱいイチゴか入ってきて、俺はそれを咀嚼した。
「チョコは?」
「も、いらない…」
「そうか」
千歳は返事をすると、パフェを茅ヶ崎の方へ。茅ヶ崎はそれを受け取って、グラタンを食べていたスプーンを突き刺した。そんなでかいスプーンで…うん、まぁいいや。
目の前から、残したごはんが割り振られどんどん消えていく。
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