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第21話

「横からかっ攫われたら先輩の悔しそうな顔が拝めるわけだな」 「こら、百」 悔しそうな顔、かぁ。 小花衣先輩に妬くくらいだから、それくらいはしてくれそうだけど。 どうなのかな。香月さんが好きなのは、本当の俺じゃないから。 そんなことを思いながら、みんなで教室へ足を進めている時だった。 「相瀬くん」 声をかけられたのは。 声のした方を見れば、大きめの封筒を抱えた人が立っていた。 「ごめん、えぇと…すぐ済むから…ちょっといいかな…」 千歳が先頭で、百にエスコートされ、クラス全員を引き連れて歩いているこの状況に、彼は戸惑いを隠せていなかった。目がきょろきょろしてる。 まぁそうだよね。 「なぁに?」 「あの、これ…えっとー、預かりもので」 「預かりもの?」 彼が指差したのは、抱えていた封筒。中身が詰まっているようで、パンパンに膨らんでいた。 「…その…、クラスのやつらが書いた、手紙、的な」 手紙的なもの? 「けど、あの、出来れば受けとるのを拒否してもらいたい」 おや? 拒否していいの? 「いいならいいけど。何で?」 聞くと、彼はちょっと苦く笑った。 「こういうのは自分で渡すのが一番だろ。というか、自分の言葉で渡すのが一番だと思うから。拒否してもらえたら、俺も次から頼まれないだろうし」 「最後が本音だね」 「はい」 素直。 「そうだなぁ…。お友達に託すような度胸のない人からの手紙は受け取れない。って言ってた、って言ってもらえばいいかなぁ…」 それだと可愛くないな。 「自分で渡しに来てもらいたいな…。ちゃんと会ってみたい…。って言ってた、って言っといてもらえる?」 「すげー小悪魔。だからみんな喜んで振り回されるんだな」 うんうん頷きながら感心されてるけどさぁ。 「別に振り回してるつもりはないんだけどね」 「絶対あるよねぇ~?」 「あるよな?」 「後ろ2人黙って。百、ガムテープ」 「承知」 「「お口ミッフィーちゃんになる!」」 まったく。 目の前の彼は笑いながら口を開いた。 「手紙渡すの頼まれて良かったかも。本物めちゃくちゃ可愛い。得した」 「ありがと」 思わず笑顔にもなるよねー。 両手で顔を覆って、「っめ……っっっちゃ可愛い…!!」って言ってくれるのすごい気分いい。

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