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第23話

可愛い子ぶる俺。 あっ、間違えた。すでに超可愛かったわ。 「ほんと悔しい気持ちもなくなるほど可愛いけどぉ~。それ言う相手 間違えてるよぉ、女王様」 「誰に言えばいい?」 「う~ん…次の彼氏にしたい人!」 次の彼氏、かぁ…。 このまま何もなかったように付き合ってくのは無理なんだよな。 不満とか色々、ちゃんと乗り越えていかないと…。そのためには話をしなくちゃいけなくて、でも、香月さんからは何もなくて。 なら俺が、って…ならなきゃなんだけど…。 でもここはさぁ、香月さんからのアクションが欲しいんだよねぇ。 あぁ、また香月さんのこと考えてる。 俺ばっかりああしてこうして、っていうのに、疲れちゃったな…。 「このまま先輩からな~んの動きもなければ別れちゃうんでしょぉ~?」 「茅ヶ崎ほんとにほしいの?」 「ん~ふふ~」 怪しい笑い。 「亭主関白気取ってるタイプがさぁ~、屈辱の涙目になるのってすっっごくいいよねぇ~」 性癖歪んでんなぁ、って思うけど、人のことだから何も言わないよ。 俺は小さく息を吐いて、百の肩に頭を寄せた。 何か色々考えるの嫌になってきた。 「…疲れた」 それだけ呟くと、百が膝裏に腕を通して抱き上げてくれる。 俺はおとなしく横抱きにされて、百の首に腕を回した。 千歳が俺の髪を優しく撫でて、額にキスをする。 「百は?」 百はちょっと笑って、俺の瞼に口付けた。 委員長も茅ヶ崎も、もう何も言わなかった。 俺は俺に優しい世界に浸っていたいし、そうしてくれるふたりが好きだし。 「チョコ食べたい」 呟けば、千歳が口にチョコを入れてくれる。 そうなんだよ。 俺に必要なのってこういう感じ。自分が誰かのご機嫌とりだけしてるなんて――どれだけ相手を好きでも――無理。 だからやっぱりよく頑張ってきたよ、今まで。 「茅ヶ崎は、亭主関白気取ってるのが好きなのか?」 「そぉいうわけじゃないんだけどぉ~、ほら、僕って小柄じゃん?」 「そうだな」 後ろでは、委員長と茅ヶ崎が話をしている。 委員長、茅ヶ崎の性癖に踏み込んでくねぇ。 「ああいうタイプってぇ、まさかこんな小柄なやつが口答えとか抵抗とか出来るわけないとか思ってるから油断してんだよねぇ~」 茅ヶ崎って確か…ほんとに小柄だけど、握力ゴリラじゃなかったっけ…。 「か弱いフリしておとなしく従っといてぇ~、油断したとこパクッとね」

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