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Moody Purple
――そんな感じだったから、午後の授業はあんまりちゃんと集中できなかった。
今日は百の部屋に泊まるから、その時ふたりに教えてもらお。
教科書とノートをカバンに入れて、それを肩にかけて立ち上がる。
ちらっとスマホを確認したけど、香月さんからはやっぱり何も来ていなかった。
昨日は一緒に出かけて指輪とか貰って…ちょっとは幸せだったのに。1日でこんな変わっちゃうんだ。
好きって言う・言わないって、ただそれだけなのに。
俺が折れればよかったのかも知れないけど…今日折れたとしても結局いつかはケンカになってたよなぁ。
だってそんなに我慢できないもん。
この、超絶ワガママな俺が。
「蜜ー、帰るぞ」
「うん」
百の声に返事をして、教室のドアへ足を向けた時だった。
「じょお…相瀬くん、先輩が」
ドアの近くにいたクラスメートがこっちを振り返る。
ってゆぅか今『女王様』って言おうとしたよね?
彼の向こうには、香月さんがいた。…心なしかちょっとムスッとしてる感じするんだけど…なんで香月さんがムスッとしてるわけ? 怒ってんの俺なんだけど。
「教えてくれてありがと」
「うん。あの…大丈夫?」
このクラスのみんなは優しいから好き。
「だいじょぶ。何とでもなるよ」
何とでもしてくれるのは俺じゃないけど。
「蜜」
名前を呼ばれた俺は、香月さんを見なかった。
代わりに千歳が先輩の方へ。
俺は百にくっついて、ただそっぽを向く係。
視界に入れない構え。
ってゆーか何あの偉そうな名前の呼び方。
「こんにちは、先輩」
千歳のにこやかな声。
「蜜は今日 俺たちと帰るので」
にこやかだけど、ピシッと言い切る。
いつもどうでもよさげな態度をとる百じゃなくて、少なくともまともに対応する千歳がそんな態度なもんだから、香月さんはちょっとびっくりしたみたいだった。
「いや…、話があるから…」
「またにしてください。…『また』があれば、ですけど」
冷ややかな言い方に、香月さんが絶句した。
そうでしょうね。千歳は今まで一度もそんな言い方したことなかったもん。
「じゃあ俺たちは失礼します」
それはね、俺が香月さんのことを『好き』って言ってたから。
百が俺の肩を抱いてドアへ向かう。
香月さんが近づいて来たけど、俺は一切目を向けなかった。
「蜜、」
「邪魔」
いつも以上に雑にあしらうのは百。
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