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第29話
…と、思いながら購買へ。
『購買』とは言え、寮があるからちょっとしたスドラッグストア並みに品揃えは充実してるし、ここの購買は独立した建物になっている。
買うものはもう決まってるから、パッパとカゴに入れて百を振り返る。
「ねー、百。俺の財布出してー」
「はいよ」
「ありがと。買ってくる」
千歳何か買うもんある? って百が聞いて、替えの歯ブラシくらいかな、って千歳が話しているのを聞きながらレジへ。
あ、エコバッグ。
「百ー、エコバッグ忘れたぁ。出してぇ」
「これか」
「うん」
ありがとー、と受けとる俺。
俺のカバンのどこに何が入ってるか、百はちゃんと分かってる。
よし、今度こそレジへ。
ちゃっちゃとお会計を済ませてふたりのとこに戻ると、ふたりはナンパされていた。
ひとりは隣のクラスの可愛いタイプの子だな。もうひとりはあんまり見たことないけど…うーん…何かちょっと鼻につく感じ。
でもま、千歳と百に声かけるあたり、見る目はあるね。
なんて思っていたら、千歳も百も相手をあしらってこっちへ来た。
「別にお話してても良かったのに」
どっちかタイプなら、そのままカフェとかでお話してくればいいのに。
「俺らの女王様は冷たいな」
千歳が笑う。
「そばに置いてくれねーの?」
百にエコバッグ持ってない方の手を取られ、指先にキスを落とされる。
「望むだけそばにいてくれていいよ」
それは本心。だけど。
「タイプの子がいたら、そっち行ってくれていいからね?」
「そうなった時は、離れる前に蜜のそばに安心できるやつがいてくれないとな」
「本当に」
千歳まで。
「買うものもういいのか?」
「うん。終わった。帰ろ」
ナンパしてた子たちは、ちょっと残念そうにしながら帰っていった。
百も千歳もあのふたりはタイプじゃない、ってことかな。
エコバッグは千歳が持ってくれたから、俺は変わらず身軽で寮まで歩く。
「今日晩ごはん何だっけー」
「鮭のホイル焼きじゃなかったか?」
「俺あれ好きー」
晩ごはんが好きなメニューでウキウキの俺。
「今日まずやることあるから、それ終わったら百の部屋行くね」
「なら、終わったら連絡くれ。迎えに行く」
「分かった」
千歳の言うことに素直に頷く俺。
俺のために言ってくれてるのが分かるからね。そういう善意はありがた~く受けとるの。
ほら、俺可愛いから、危険があるんだよね。
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