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第31話
ん、待てよ?
「ってことはさぁ、今ドアスコープ覗いたら誰か分かるわけだよね」
『そぉだねぇ~。覗いたら向こうも覗いてた、なんてことないといいねぇ~』
「茅ヶ崎、今のは不快。減点」
『やっべ』
とりあえずこっそり玄関へ行き、こっそりドアスコープを覗く。
ほほぅ。
そこには確かにひょろっとした雰囲気の人が立っていた。
ってゆーかさぁ、何か睨んでる気がするのは気のせいかな。ドアスコープだからイマイチよく分かんないけど…何かやな感じはする。
面識ないはずだけど…何かしたっけ。
考えながらこっそりまたキッチンへ移動。
「今見てきたけど、多分知らない人」
『そっかぁ~』
「めっちゃ睨まれてる気がしたんだけど」
『え~? 振った相手とか? それなら覚えてるかぁ~。藤くんとか須賀谷くんのファンとかぁ~?』
「あー、なくはないね」
俺いつもふたりを独り占めしてるからね。
『そんな女王様睨むような身の程知らず、藤くんたちが相手にするわけないのにねぇ~』
茅ヶ崎が電話の向こうで笑った。
『僕ちょっと声かけてみるねぇ~。電話このままにしといてぇ』
「うん」
がさがさと動く音のあと、「あのぉ」って茅ヶ崎の声が聞こえた。ちょっと遠いけど、ちゃんと声は聞こえる。
『この部屋に用事ですかぁ~?』
『…誰?』
『この部屋の子の友達ですぅ~。ドアの前に立って、どぉしたのかなぁ~、って』
『あんたに関係ない』
うわ、感じ悪。
『そぉだけどぉ。用がないならそこにいるのやめた方がいいですよぉ~。すごぉ~く不審だから、僕、警備に電話しようかなぁ~、って思いましたもん。ってゆぅか今繋がってるんですけどぉ~うふふ』
『っな、はぁ!? ちょ、何やって…!』
繋がってるのは俺にだけどね。
『きゃあ、こわぁ~い』
『おい! やめろよ!』
茅ヶ崎遊んでんじゃん。
『っや、あ…っ、犯されるぅ』
『変な声出すな! そんなことしてないっ!』
『あ、あぁっ…やぁんっ』
『おい!!』
ちょっと笑いそう…。すごいごっそごそ音がしてるから雰囲気だけはあるね。
『ところで何年何組ぃ~?』
『言うと思うか!?』
『んふっ。思わないけどぉ~、生徒手帳げっとぉ~』
『っなあぁあ!? かっ、返せっ!』
『2年4組 芝木雪香(しばき ゆきか)。へぇ~、先輩ですねぇ~』
『ちょっ!! 名前ぇ!!』
遊ばれちゃって可哀想…。
全然思ってないけど。
しばきさん、ねぇ…。知らないな。
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