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第33話

基本はお風呂に入った後で誰かの部屋に集まって遊ぶのが日常。 でも今日はバラ風呂だから、お風呂入る前に百の部屋。 勉強道具とパウンドケーキを持って部屋を出ると、 鍵を閉める。 「蜜、何か甘い匂いすんな」 「ほんとだ」 もうバレたし。 お菓子の甘い匂いって分かりやすいもんね。 「パウンドケーキ作ってたの」 「何でまた」 「お昼のお礼、的な」 「律儀だな。あれはみんな好きでやってるのに」 千歳が穏やかに笑う。 茅ヶ崎からの話聞いた後だから、すごくくすぐったい…。 「…俺も好きでやってるからいいの」 つん、と口を尖らせると、ふたりは優しく笑った。 「もー早く行こ! 月餅食べる!」 「先に月餅食べたら夕飯入らなくなるぞ」 「んーそれはやだ」 ごはんはちゃんと食べたい。 今日は好きなメニューだから特に。 「…ふたりにも焼いたから、ごはん食べたらね」 「蜜」 「なに」 何か照れちゃう。 百を見ると、目尻にキス。千歳も同じように反対側にキスをした。 「ありがとな」 「…どういたしまして」 「ありがとう」 「…うん」 照れちゃう。 まぁね、照れた俺も盛大に可愛いけどね。 百の部屋に着くと、とりあえず聞き流してしまった午後の授業を教えてもらう。それから宿題して、予習もして。 そうすると、ちょうどよく夕飯の時間。 寮の食堂に下りていけば、茅ヶ崎や委員長は既に席について食べ始めていた。早い。 俺は何となく辺りを見回して、しばきさん?だったかな? あの人がいないか軽くチェック。 …見当たらない。 まだ来てないのかな…。 「蜜?」 「何でもない。ごはん食べよー」 カウンターで食事を受け取って、テーブルにつく。 「そう言えば、先輩からは何か連絡入ったりしてたのか?」 箸をとって食べ始めたところで、千歳からそんな質問が。 「うん。LINEと電話入ってたけど、通知OFFにしてあるし開いてない」 「そうか」 千歳はそれ以上香月さんについては何も聞かなかったし、百に至っては香月さんの話題すら出さなかった。 まぁ、好きなものはいい気分で食べたいからいいんだけど。 「蜜、プリン食うか?」 「えっ、いいの? やったーぁ! 百大好き~!」 「プリンで大げさだな」 笑われたけどいいんだもん。 お昼のプリンちゃんと食べれなかったから。 「藤くんはぁ~、ほんとに女王様に甘いねぇ~」って、茅ヶ崎が笑っていた。

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