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第43話

「ありがとうね、千歳」 「あぁ」 カバンを下ろして椅子に座った千歳は、ちょっとため息をついた。 「しつこかったのぉ~? 先輩」 「そうだな」 茅ヶ崎の質問には力強く頷いた。 マジかぁ。やだな。 「蜜があんな態度とるなんて、ってな」 「やっぱりフラれたこと分かってない感じなんだぁ~」 「分かってないって言うよりは認めたくない感じだった」 「随分自信あんじゃん、あの人」 百の指が俺の髪を巻き付けるように動く。 ほんとだな、なんて言いながら、千歳も俺の髪に手を伸ばした。 「それでな」 「うん」 「蜜があんな態度とるのはお前たちのせいじゃないのか、って言われて」 「うん?」 どういうこと? 「俺らが蜜に『別れろ』って言った、って?」 「まぁそんな感じだな。そそのかしたんじゃないのか、って」 「どこまでも自分に都合のいい頭だな。蜜のお姫様演技も上手かったのかねぇ」 「まぁ、可愛い俺が控えめな雰囲気でふわふわにこにこしてたらそうなっちゃうよね」 「女王様の女王様なところ見てなかったらそうなっちゃうよねぇ~」 「徐々に見せてくつもりだったの」 ずっと可愛いだけの控えめな俺なんて無理なんだから。 「肝心な言葉も言わないし自分の理想ばっかり投影させて蜜を知ろうともしなかった人がよく言いますね、って言ったら黙ったけどな」 何だよそれ。自覚あったってこと? あったってこと? 「それでどうしたのぉ~?」 「蜜は別れたつもりでいるから、これ以上接触しようとするのはやめてくれ。って伝えてきた」 「理解したかなぁ~?」 「どうだろうな。蜜には執着ありそうだったから」 「やだなぁ…」 恋人に執着するのって何かちょっと怖くない? 「でもさぁ~、昨日の見てた人たちは、女王様が先輩に興味なくなったの分かったと思うからぁ~、これから告白してきてくれる人の中からパッと次の相手選んじゃえばぁ~? 先輩よりスペック高そうな人」 「う~ん…そんな簡単には選べないんだよね」 「ワガママ聞いてもらわなきゃいけないからな」 「そうそう」 百に頷いちゃう俺。 聞いてくれなくてもいいけど、ワガママな俺を受け入れてはほしい。 「…ワガママもだけど、女王様の場合は須賀谷くんと藤くんのそういう近さも受け入れてもらわないとだよねぇ~」 ふたりに髪撫でられてますけど何か? 千歳と百も、それが何か?みたいな顔してるしね。

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