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第44話
でもそれって俺にもいえることなんだよね。
だって千歳と百に彼女や彼氏なりできたら、俺の近さも受け入れてもらわないとだもん。
そりゃあそうなったらちょっとは遠慮するけど。
でも急に距離とったりするのは無理だもん。
そんな都合のいい彼氏や彼女いないか…。
いないよね。
俺が可愛らしくため息をついた時、「蜜ちゃんいる?」って声が聞こえた。
俺を蜜ちゃんと呼ぶのは中矢先輩だな。
今、『誰だっけ?』って思った人、正直に手を挙げてね。髪の毛アッシュブルーの、香月さんの友達だよ。
ドアの近くにいたクラスメートがこっちを振り向いた。
「じょお、あい、女王様、先輩が」
「ねぇ、今なんで2度も言い直したの? 相瀬で合ってるよ」
「いや、何か自信なくなって」
「自信もって! 合ってるから」
そもそも『女王様』って名前じゃないから。
まったく。
席を立ってドアの方へ行く。
「おはよう、蜜ちゃん」
「おはようございます」
「あのさ…今ちょっといい? 聞きたいことがあるんだけど…」
「香月さんのことですか?」
あ、ダメ。ため息混じりになっちゃった。
中矢先輩はちょっと苦笑い。
「うん。昨日の朝さ、あの後 香月から話聞いて、俺も忍足も『香月が悪い』って、謝りに行けって言ってたんだけど…何か変なプライドって言うかで、あいつ全然で」
…ふーん。そうだったんだ。
「昼休みに蜜ちゃんすごい人数でごはん食べてたでしょ? 間接キスとか普通にしてて、あれでまたヘソ曲げたっていうか…謝れっつってんのに…。放課後 蜜ちゃんのとこ行ったけど、威圧的な態度だったんだって?」
「うん」
とても素直に頷いちゃう俺。
「で、蜜ちゃんすごく不機嫌で、一部では香月がフラれたって噂んなってるんだけど…それほんと?」
「うん」
これもとても素直に頷いちゃう俺。
「あー…そっか…」
中矢先輩が額に手を当てた。
これは、どうしようかな、って感じ?
「あの…香月 結構荒れててさ、ちょっと1回会ってやってくれないかな?」
「嫌です」
だって。
「俺、今までずっと香月さんの言うこと聞いてきたし、香月さんの要求にも応えてきたけど、香月さんは全然だもん。全然俺のこと分かってくれないし、全然見てない。俺ばっかりしなきゃいけないことですか?」
中矢先輩が、ぐ…っと黙った。
「…それを言われたら…ぐうの音も出ないよね」
そうでしょ。
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