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第45話

「そもそも香月さんって、おとなしくて自分の言うこと聞く子なら誰だっていいんじゃないですか? 俺、香月さんのご機嫌とるつもりなんてないですから」 「え、それはな……ないよ」 「何で今1回言い淀んだんですか」 ないならさくっと断言してよ。 「自分の理想ばっかで、俺がどういう子かなんて興味ないみたい。そんな人と付き合ってくのなんて無理です」 「あー…理想っていうか、こういう子だといいな、って思ってるっていうか…えっとだから…………一緒か」 一緒だね。 最後諦めたね。 「…でも確かに、今と香月と一緒にいる時と、蜜ちゃん違うもんね。香月といる時はこんなにスパッとした喋り方しないっていうか」 「香月さんはあーいうのが好きですもん」 「…否定はできない」 でしょ? 「まーでも俺はこっちの蜜ちゃんの方が好きだけどな。いつもスパッとしてるのに不意に甘えられたら余計堪んないっつーか。まぁそれはちょっと置いとくとして」 中矢先輩って口説くの上手いかもなぁ。 俺が香月さんという友人と付き合ってたからそういうことしなかったんだろうけど。 「どうしても香月と会うのはダメ?」 「俺ね、『お前』って呼ばれるのほんとに嫌なんです。そうじゃなくても、香月さんは俺のことアクセサリーみたいにしか思ってなかったんじゃないかな、って思うし」 「アクセサリー、って…」 「可愛くて従順で、つれて歩くにはちょうどいい、くらいにしか思ってなかったんじゃないの? アクセサリーが自分の思い通りに動かなくなったから荒れてるだけでしょ?」 「蜜ちゃん…」 「だから俺のことなんて香月さんは最初から全然見てないの。そんな人いらない。香月さんには会いません。会いたくない」 中矢先輩は俺の目を見て、少ししてから「しょうがないかぁ…」ってため息をついた。 「先輩、これ返しておいてもらえませんか?」 「えっ、うわ、これ…えー…」 先輩が快諾しないのは仕方ない。 だって俺が預けたの、香月さんからもらった指輪だもん。 「蜜ちゃん…」 めっちゃ困惑させてしまっている。 先輩ごめんなさい。 「だって…会いたくないんだもん…」 「うっ…ずるい…可愛い」 えへっ。 「もうほんとに別れるってこと…?」 「別れた、ってことです」 中矢先輩は手のひらの指輪をじっと見つめた。 「…これって結構な独占欲なんじゃないの? 黒って蜜ちゃんのイメージじゃないじゃん。自分で黒いリング選ぶようには思えないから、明らか贈り物って分かるし」

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