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第48話
「ごはん食べに行こ?」
千歳と百を振り返ると、ふたりとも二つ返事で立ち上がった。
「今日 何食べる?」
「青椒肉絲食べたいからB定食」
百は青椒肉絲の気分か。
「千歳は?」
「そうだな…日替わりかな」
「んー、じゃあオムライスにしようかな」
うちの学食のオムライスは、ごはんが醤油ベースの味付けで和風な感じ。これがまた美味しいんだよね。
「あぁ、オムライスもいいな」
「じゃあ百、一口交換してね」
春巻きちょっと食べたい。
そんな話をしながら教室のドアへ向かう。機嫌よくドアを開けると、そこには。
「…嫌」
あ、思わず嫌って出ちゃった。
黙ってドアをしめて、ふたりを見た。
「ねぇ、今 香月さんいなかった?」
「いたな。偉そうに腕組みしていた」
「納豆よりも粘着質だな、あの人」
「千歳、納豆と比べないで。納豆がかわいそう」
「蜜、納豆好きだもんな」
「うん」
香月さんより好き。
「ねぇ、茅ヶ崎」
ふたりのさらに後ろの茅ヶ崎を振り返る。
茅ヶ崎は、『うへぇ』って顔をしていた。
「しつっっこいねぇ~」
茅ヶ崎に しつっっこいと言われる香月さん。
何かちょっと怖いんですけど。
「これはヤバいにおいがするな」
「委員長、不吉なこと言うのやめて」
「蜜!」
ガラッと勢いよくドアが開いて、香月さんの声。
サッと俺を背中に庇う百と千歳の頼もしさったらもう半端ない。
「昨日『大嫌い』って言われて振られた人が何の用?」
先制パンチを繰り出したのは百から。
香月さんの眉がピクリと動く。
「あんな一方的なの、納得できるか!」
「はぁ? どの口が言ってんの? あんたが蜜に求めてたのなんてもっと一方的じゃん。っていうか、そっちが納得しようがしまいが振られたのは事実だし?」
「そもそも『納得』なんて必要なんですか?」
百が香月さんに対して煽るようなのはいつものことなんだけど、千歳までそうなるのはなかなか珍しい。
「…これは俺と蜜のことだ。お前たちは黙ってろ」
「その学習しない頭って何のためについてんの? 『お前』って言わないと死ぬの?」
百が鼻で笑った。
香月さんの怒りのボルテージが上がった気がする。別にどうでもいいけど。
「っ、大体 何だその態度は!」
「だって俺あんたのこと大嫌いだし。仕方ないじゃん」
「すぐ大きい声出す人は蜜も嫌いですよ。みっともない」
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