48 / 240

第48話

「ごはん食べに行こ?」 千歳と百を振り返ると、ふたりとも二つ返事で立ち上がった。 「今日 何食べる?」 「青椒肉絲食べたいからB定食」 百は青椒肉絲の気分か。 「千歳は?」 「そうだな…日替わりかな」 「んー、じゃあオムライスにしようかな」 うちの学食のオムライスは、ごはんが醤油ベースの味付けで和風な感じ。これがまた美味しいんだよね。 「あぁ、オムライスもいいな」 「じゃあ百、一口交換してね」 春巻きちょっと食べたい。 そんな話をしながら教室のドアへ向かう。機嫌よくドアを開けると、そこには。 「…嫌」 あ、思わず嫌って出ちゃった。 黙ってドアをしめて、ふたりを見た。 「ねぇ、今 香月さんいなかった?」 「いたな。偉そうに腕組みしていた」 「納豆よりも粘着質だな、あの人」 「千歳、納豆と比べないで。納豆がかわいそう」 「蜜、納豆好きだもんな」 「うん」 香月さんより好き。 「ねぇ、茅ヶ崎」 ふたりのさらに後ろの茅ヶ崎を振り返る。 茅ヶ崎は、『うへぇ』って顔をしていた。 「しつっっこいねぇ~」 茅ヶ崎に しつっっこいと言われる香月さん。 何かちょっと怖いんですけど。 「これはヤバいにおいがするな」 「委員長、不吉なこと言うのやめて」 「蜜!」 ガラッと勢いよくドアが開いて、香月さんの声。 サッと俺を背中に庇う百と千歳の頼もしさったらもう半端ない。 「昨日『大嫌い』って言われて振られた人が何の用?」 先制パンチを繰り出したのは百から。 香月さんの眉がピクリと動く。 「あんな一方的なの、納得できるか!」 「はぁ? どの口が言ってんの? あんたが蜜に求めてたのなんてもっと一方的じゃん。っていうか、そっちが納得しようがしまいが振られたのは事実だし?」 「そもそも『納得』なんて必要なんですか?」 百が香月さんに対して煽るようなのはいつものことなんだけど、千歳までそうなるのはなかなか珍しい。 「…これは俺と蜜のことだ。お前たちは黙ってろ」 「その学習しない頭って何のためについてんの? 『お前』って言わないと死ぬの?」 百が鼻で笑った。 香月さんの怒りのボルテージが上がった気がする。別にどうでもいいけど。 「っ、大体 何だその態度は!」 「だって俺あんたのこと大嫌いだし。仕方ないじゃん」 「すぐ大きい声出す人は蜜も嫌いですよ。みっともない」

ともだちにシェアしよう!