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Mood is bright yellow
お腹が満たされた俺は、ご機嫌で学食を出た。
満足満足。
「女王様って食べてる時の唇に目が行くよねぇ~」
「それはどういう意味で?」
「ぷるぷるで可愛いなぁ~、って意味とぉ、えっちだなぁ~、って意味ぃ~」
「満面の笑みで言うな」
「大丈夫だよぉ~、女王様が嫌がることはしないからぁ」
ならいいけど。
教室へ足を進めながら、そういえば昨日この辺で手紙――受け取らなくていいって言われたから受け取らなかったけど――渡されたなぁ、なんてことをふと思い出した。
「あの…相瀬くん」
そうそう、こんな風に声かけられて…――って。
え?
思わず振り向くと、そこには昨日と同じ人が立っていた。昨日より死んだ目をして。
「昨日より目が死んでるな」
あ、百も同じこと思ってた。
俺に声をかけた彼は力なく、へへ…、と笑った。
あの後クラスで何かあったのかな?
今日もまた封筒を抱えている。
「それ昨日のやつ?」
俺が聞くと、彼は小さく頷いた。
「持って帰ったら、俺の頼み方がいけないって言われて。いやまぁ、頼んでないっつーか、受け取らないでくれって言ったし」
そうだね。
「今日は土下座して頼み込んでこいと言われまして…」
「っていうかさぁ、それ、そん中に自分の書いたやつ入ってんの?」
百が聞くと、彼は目をぱちくり。
その後 微妙に顔を赤らめた。
ふぅん?
「じゃあそれだけ受け取ればいいんじゃん?」
「それもそうだな」
「え、」
百と千歳に言われて、彼はまた目をぱちくり。
「ま、ちゃんと自分で渡しに来てほしいなぁ、って俺 昨日言ったもんね。じゃあその手紙ちょうだい」
「えっと…?」
「全部じゃなくて、えっと…何くん?」
「あ、柳木、です。柳の木で、やぎ」
「柳木くん、ね。じゃ、柳木くんのだけちょうだい」
柳木くんは、こう、何て言うか…平凡な感じと言うか…そんな感じ。
でも、嫌いじゃない。こうやって使い走りみたいにされちゃってても。
よく見ると、鼻筋通ってていい男なのでは?とも思うし。
「えぇっとぉ…」
「ダメな感じ?」
こて、と首を傾げる俺。
「かわい…あ、いや、ダメ…じゃないけど…」
ふふん。思わず『可愛い』が出ちゃうあたり、柳木くんは正直だね。
「教室戻った時に厄介なことになる感じ?」
「そうですね…」
百の質問に、柳木くんは遠い目をして頷いた。
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