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第57話

そんなことを思っていると、 「っみ、見つけたぞっ!」 どこかで聞いたことのある声が聞こえた。 うーん、でもスルーでいいよね。めんどくさいし。 きっと千歳も同じことを思ったんだと思う。振り向きもせず淡々と足を進めていた。 もちろん茅ヶ崎も。 「ちょっ、待ってストップ! そこの…えぇっと………女王様ご一行様ストップ!! お待ちください!!」 なんで考えて出たのがそれなの? しかも。 「何で千歳 足止めちゃうの?」 「女王様ご一行様って他にいないだろうな、と」 「感心しないで」 「でも、僕らしかいないよねぇ~」 「そんなことないでしょ?」 「だって、お姫様抱っこされてるの…ここには女王様しかいないしぃ~」 「お姫様であって女王様じゃないじゃん」 「あ、それもそうか」 「言われてみればそうだねぇ~」 そうでしょ? 「早く教室行こー」 「そうはさせるかっ!」 シュバッと躍り出てきたのは、昨日も今朝も見た人。名前は結局思い出せなかった。 ここに百がいたら間違いなく『邪魔』って言ってどかしてくれたのにな。 「誰?」 「僕の名前はどうでもいい!」 「どうでもいいさんね。変わった名前だね」 「あっ、違っ、名前が『どうでもいい』なんじゃなくて、名前は気にしなくていいって意味でっ」 分かってるわ、それくらい。こっちはおちょくってんの。 「で、何の用?」 「か、香月くんと別れたって言ってたけどっ」 「その名前聞くの不快だって言ったじゃん。何で学習しないの?」 「あっ…すみません」 素直。 「…じゃあ、あの…何て呼べば…」 「自分で考えてよ」 「えぇと、じゃあ…Kくん、で…」 「安直だけどまぁいいよ」 「あっ、ありがとうございますっ」 この人、自分が何で今お礼言ったか分かってるのかな? まぁいいけど。 「Kくんと別れたって言ってたけど、Kくんそんなつもりないみたいなんだけど…ですけど、どういうことですかっ?」 強気なのに何で敬語に直したの? 「そんなの知らないよ。俺は嫌いってちゃんと伝えたし。自分がさっさと告白すればいいんじゃないの?」 「っだ、だって…! 女王様に未練があるなら絶対振られちゃうじゃん…じゃないですかっ!」 「はぁ? そんなの知らないよ。その気にさせなよ」 「そんなこと言ったって…仰ったって、どうすれば…」 どうでもいいけど、ちょいちょい敬語に直すの何なんだろう。いや、いいんだけど。

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