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第63話
柳木くん…キャラが好き。
「女王様の言うこと全部聞いちゃう系~?」
「や、何か…」
柳木くんがほんのり頬を染める。
「出来なくても聞いてあげたくならない…?」
「………」
何で黙るの茅ヶ崎。
と思っていたら、茅ヶ崎は千歳と百を振り返った。
「藤くん、須賀谷くん」
「どうした?」
「何だ?」
「彼は本物ですよぉ~」
「みたいだな」
「そうだな」
本物、とは?
3人で分かり合っちゃって、俺と柳木くんは はてなを浮かべてるんだけど。
「ねー早く行こうよ」
ちゃっちゃと靴を履き替えた俺が振り向いたその向こう。
「うわ、ねぇほんと早くして」
香月さんの姿を発見してしまった。
茅ヶ崎の香月さん予報当たるんだけど。
「はいはぁ~い。察知したよぉ~」
「ごめんな、柳木くん。すぐ出よう」
「え? あ、はい」
柳木くんは百に素直に頷くと、自分のクラスの下駄箱へ行ってサッと靴を履き替える。
いざ!
「蜜!」
「捕まった」
「ちょっと遅かったねぇ~」
ツいてないな。
「俺 帰りたいから1分以内で用件済ましてくださいね。何?」
迷惑なんですけど。って気持ちを隠さない素直な俺。
「納得できない!」
「あっそ。で?」
「で? って…」
「1分経ったから帰ります。さようなら」
「おい! 蜜!」
「そういう態度がすごく嫌なの! いっつも高圧的で、俺は悪くないみたいなその態度がほんとに嫌い! もう話しかけないで!」
声を荒げた俺に、香月さんが目を見張る。
「蜜」
千歳が俺を呼ぶ。肩を抱いて、香月さんに背中を向けた。
「おい、待て! まだ話はっ」
「終わってるだろ。あんたと蜜の関係も終わってんの。いい加減分かれよ」
百の冷たい声を聞きながら、足を進める。
せっかく楽しい気分だったのに。
こういうのって、相手が納得するまでちゃんと話さなきゃいけないの?
納得するかどうかも分からないこと。
もう嫌だ。
「大変だねぇ~」
ため息混じりの茅ヶ崎の声。
「あの先輩って確か別れたとか噂が…」
「女王様に振られたんだけどぉ~、諦めがねぇ~」
「そっか、未練が…」
「未練っていうか執着っていうかぁ~」
「執着…は、怖いなぁ」
茅ヶ崎と柳木くんの会話を聞きながら、俺は息をついた。
百がそっと背中をさすってくれる。
「…ちゃんと話さなきゃダメなの…?」
「どうだろな。ま、そん時はついてくし中矢先輩とか忍足先輩にもいてもらおうな」
「うん…」
その方が絶対安全。
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