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第68話
これが誰に似合いそう、この服着てみたい、なんて色々話しながらお店を回る。
「女王様これどぉ~?」
「いいんだけどちょっと大きいんだよね」
「Tシャツとかもレディース買うことあるのぉ?」
「あー、シンプルなのだったらたまにね。ってか茅ヶ崎も俺とそんなに体型変わらなくない? メンズサイズ大きいことない?」
「あるにはあるけどぉ、僕こう見えて脱いだらすごいんです、だからぁ~」
「贅肉が?」
「引き締めてぇ~。筋肉ぅ」
ちょっと悔しい。
分かってたけどね。だって、いくら相手が油断してるからって自分より大きいのを引きずり倒すには、それなりの力が必要なわけで。
そしたら、それに見合う筋肉はそりゃあるよね。
「茅ヶ崎、腹筋割れてるの?」
「うっすらぁ~。見てみる~?」
「今度の体育ん時見せて」
千歳と百の体が引き締まってるのは知ってるし納得なんだけどさ。
うーん…筋トレしようかな…。
「柳木くんは? 腹筋割れてる?」
「えっ、あっ、俺、俺は…えっと、割れてるってほどじゃないですけど、一応」
「…俺だけか」
割れてないのは俺だけか。くそぅ…。
「蜜は腹薄いからな」
「薄いとか言わないで」
「薄いじゃん」
百にお腹と背中を手でぺたって挟まれた。
「これ、どこに内臓入ってんだ、ってくらい薄いよな」
「そんなに薄くないでしょ」
百のお腹を押すけどびくともしない。立派な腹筋をお持ちなの。
「何かずるくない?」
「そうか?」
「俺たちが薄かったら蜜を抱き上げられないだろ?」
「それはそうなんだけどー」
千歳の言うことはもっともなんだけどさ。もうちょっと筋肉ほしいよなぁ。
「百、筋肉分けてよ」
「しょーがねぇな」
「いやいや無理でしょぉ~。それに、ムキムキの女王様より華奢な女王様の方が女王様って感じするよぉ~?」
「ムキムキじゃなくていいんだけど…」
そこまではいらない。
唇を尖らせて百と千歳を見上げると、百には頬を、千歳には髪をそっと撫でられた。
「女王様の甘える表情可愛いよねぇ~」
「あああ可愛い…っ!!」
「柳木くんめちゃめちゃ感動するじゃん~」
今は可愛いからいいけど、可愛さが武器でなくなる頃のために筋力はつけといた方がいいよね。あと、知力と財力。
つけるものいっぱいだな。
ま、儚い武器は武器じゃないもん。
儚くない武器がほしい。
ちゃんと自分の中を埋められるような武器が。
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